JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG30] [EJ] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 106 (国際会議場 1F)

コンビーナ:清家 弘治(東京大学大気海洋研究所)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、座長:清家 弘治(東京大学大気海洋研究所)、座長:山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)

15:00 〜 15:15

[HCG30-06] 河成段丘の形成過程と侵食速度の時間変化

*山村 美稀1遠藤 徳孝1 (1.金沢大学大学院 自然科学研究科 自然システム学専攻 地球環境学コース)

キーワード:段丘、侵食速度

河成段丘は、過去の河床と下刻の記録であり(Pazzaglia, F. J. & Brandon, 2001)、隆起や海水準の低下といった急激な変化によって、階段状の地形が形成されることから、河川の鉛直浸食速度を定量化する直接的な方法を提供している。しかし、段丘から算出される侵食速度が新しい段丘ほど速く見えてしまうというSadler effectがフィールド研究(Finnegan, Schumer and Finnegan, 2014) 、数値的モデル(Hancock and Anderson, 2002)を行った研究でみられており、段丘からの侵食速度は見かけ上の下刻速度であると示唆されている。
 本研究では、時間経過の観察が可能な山側傾動隆起をつけたモデル実験を行い、段丘から侵食速度を計算し、Sadler effectがみられる要因について検証することを目的としている。
 水槽に標準砂とカオリナイトの量比を10.5:1(Ouchi, 2011)で混合した砂を初期斜面1°で水槽に敷き詰め、スプリンクラーで霧状の雨を降らせることによって地形を発達させていくモデル実験を行った。河口側に設けた傾動モーターを用いて、河口をゆっくりと下げることによって相対的な山側傾動隆起を再現している。はじめの40分間は地形を発達させるために隆起をさせずに雨を降らせた。その後の試行は隆起をさせながら、雨を20分間降らせ、その後の地形をカメラで撮影する作業を繰り返し行った。
 ある一つの流路に沿って8個の段丘(T1-T8)を観察することができた。それらの段丘から侵食速度を算出すると、形成してからの時間が短いほど高い侵食速度がみられ、Sadler effectを実験でも再現された。また、Sadler effectは段丘形成からの経過時間が長くなるほど小さくなることが確認できた。
 Sadler effectの減衰について考えるために、河川の高度変化から実際の侵食速度を見積もったところ、20分間隔の侵食速度から、侵食優勢と堆積優勢が周期的に変動していることから、河床が一定でなく変動していると考えられる。20分間隔の侵食量を累積し、時間平均した侵食速度の時間変化と段丘からの侵食速度の時間変化の傾向と一致している。河床変動の周期性がSadler effectがみられる要因であると考えられ(Gallen et al., 2015)、この周期を知ることができれば、Sadler effectが減衰するまでの時間を予測することができるかもしれない。