12:00 〜 12:15
[HCG32-05] 再冠水試験に伴う埋め戻し試験 (2)坑道埋め戻し材の水理学的挙動の重要因子の推定
キーワード:埋め戻し材、飽和挙動、シミュレーション
日本原子力研究開発機構は,高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の一環として,岐阜県瑞浪市に位置する瑞浪超深地層研究所において,結晶質岩(花崗岩)を主な対象として深地層の科学的研究(地層科学研究)を進めている。現在,瑞浪超深地研究所の深度500mに掘削した水平坑道を利用した研究開発として,①地下坑道における工学的対策技術の開発,②物質移動モデル化技術の開発,③坑道埋め戻し技術の開発の3つの課題を設定し進めている。
これらの研究開発課題のうち③坑道埋め戻し技術の開発の一環として,瑞浪超深地層研究所の深度500mの坑道内に止水壁を設置することで坑道の一部(以下,冠水坑道)を地下水で満たし,再冠水に伴う地質環境特性の回復過程を把握する再冠水試験を実施している。この試験の一部として,坑道内のボーリングピットを利用して,坑道冠水時の埋め戻し材(ベントナイト,砂,礫)の透水性や膨潤圧などの物性評価手法の構築を目的とした埋め戻し試験を実施している。
埋め戻し材には砂や礫とベントナイトの混合物を用いている。ピットの埋め戻し材内部には水圧計,土圧計及び土壌水分計を配置し,坑道の冠水に伴う埋め戻し材内部の水圧や飽和度の変化データを取得している。取得したデータからは,埋め戻し後約1ケ月程度で,埋め戻し材内部が飽和していることが示唆されている。他方,高山ほか(2015) による埋め戻し材の物性をベントナイト100%と仮定した予察解析では,冠水後約1年でピット全域の飽和度が90%以上に達する結果であった。このことから埋め戻し材のベントナイトの含有量が飽和挙動に影響することが示唆されたものの,ベントナイトを含む埋め戻し材の飽和挙動に影響を与える要因は特定されていない。
上記の結果を踏まえ,本研究では,定常状態における埋め戻し材内部の飽和度変化に影響を与える要因を特定することを目的として,固相/液相/気相連成有限要素解析コードDACSAR-MP(金澤ほか,2012)を用いた解析を実施した。解析では,埋め戻し材の膨潤変形による間隙率変化が飽和度変化に与える影響,埋め戻し材内部の透水性および侵入する地下水の流量と飽和度変化の関係,埋め戻し材の吸水能力と飽和度変化の関係に着目し,①埋め戻し材の膨潤変形,②埋め戻し材の透水性,③埋め戻し材の不飽和特性を感度パラメータとした感度解析を実施した。
埋め戻し材の膨潤変形に着目した感度解析の結果,膨潤変形の有無で定常状態に至るまでの飽和度の時間変化に若干の違いが認められたものの,定常状態に至るまで約250日を要した。また,定常状態における飽和度分布は膨潤変形を考慮した場合とほぼ同様になることを確認した。埋め戻し材の透水性に関する感度解析では,ベントナイト100%の場合の透水性よりも100倍高い場合を想定した解析結果においても定常状態に至るまで約200日を要し,ピット内中心付近では完全には飽和しないことが確認された。これに対し,不飽和特性に関する感度解析では,粒径の大きさと関連のあるモーレム定数を大きくした場合に約10日で埋め戻し材の全域がほぼ飽和した。
これらの結果は,埋め戻し材の不飽和特性が埋め戻し材内部の飽和度変化に影響を与える重要なパラメータであり,特に埋め戻し材の平均的な粒径が関連している可能性を示唆している。さらに,埋め戻し材の飽和度変化を精度よく推定するためには,不飽和特性に関するデータを取得することの必要性が示された。
これらの研究開発課題のうち③坑道埋め戻し技術の開発の一環として,瑞浪超深地層研究所の深度500mの坑道内に止水壁を設置することで坑道の一部(以下,冠水坑道)を地下水で満たし,再冠水に伴う地質環境特性の回復過程を把握する再冠水試験を実施している。この試験の一部として,坑道内のボーリングピットを利用して,坑道冠水時の埋め戻し材(ベントナイト,砂,礫)の透水性や膨潤圧などの物性評価手法の構築を目的とした埋め戻し試験を実施している。
埋め戻し材には砂や礫とベントナイトの混合物を用いている。ピットの埋め戻し材内部には水圧計,土圧計及び土壌水分計を配置し,坑道の冠水に伴う埋め戻し材内部の水圧や飽和度の変化データを取得している。取得したデータからは,埋め戻し後約1ケ月程度で,埋め戻し材内部が飽和していることが示唆されている。他方,高山ほか(2015) による埋め戻し材の物性をベントナイト100%と仮定した予察解析では,冠水後約1年でピット全域の飽和度が90%以上に達する結果であった。このことから埋め戻し材のベントナイトの含有量が飽和挙動に影響することが示唆されたものの,ベントナイトを含む埋め戻し材の飽和挙動に影響を与える要因は特定されていない。
上記の結果を踏まえ,本研究では,定常状態における埋め戻し材内部の飽和度変化に影響を与える要因を特定することを目的として,固相/液相/気相連成有限要素解析コードDACSAR-MP(金澤ほか,2012)を用いた解析を実施した。解析では,埋め戻し材の膨潤変形による間隙率変化が飽和度変化に与える影響,埋め戻し材内部の透水性および侵入する地下水の流量と飽和度変化の関係,埋め戻し材の吸水能力と飽和度変化の関係に着目し,①埋め戻し材の膨潤変形,②埋め戻し材の透水性,③埋め戻し材の不飽和特性を感度パラメータとした感度解析を実施した。
埋め戻し材の膨潤変形に着目した感度解析の結果,膨潤変形の有無で定常状態に至るまでの飽和度の時間変化に若干の違いが認められたものの,定常状態に至るまで約250日を要した。また,定常状態における飽和度分布は膨潤変形を考慮した場合とほぼ同様になることを確認した。埋め戻し材の透水性に関する感度解析では,ベントナイト100%の場合の透水性よりも100倍高い場合を想定した解析結果においても定常状態に至るまで約200日を要し,ピット内中心付近では完全には飽和しないことが確認された。これに対し,不飽和特性に関する感度解析では,粒径の大きさと関連のあるモーレム定数を大きくした場合に約10日で埋め戻し材の全域がほぼ飽和した。
これらの結果は,埋め戻し材の不飽和特性が埋め戻し材内部の飽和度変化に影響を与える重要なパラメータであり,特に埋め戻し材の平均的な粒径が関連している可能性を示唆している。さらに,埋め戻し材の飽和度変化を精度よく推定するためには,不飽和特性に関するデータを取得することの必要性が示された。