14:00 〜 14:15
[HCG32-07] RQDに基づく割れ目頻度の推定方法の検討
キーワード:割れ目頻度、RQD、土岐花崗岩
<はじめに>
高レベル放射性廃棄物の地層処分において,日本学術会議(2014)は,「放射性核種が地下水によって人間環境に運ばれるかも知れないことは大きな不安要因で」あることから,「割れ目の少ない岩盤を処分場候補地とすることが望まし」く,それには「地質履歴から割れ目の少ない岩盤を探す論理立てを確立することが必須である」としている。このためには,まずは国内の岩盤(岩体)での割れ目の分布状態を知る必要があるが,割れ目の分布を調査した事例は限られている。そこで,本検討では,割れ目を評価するための代替情報として,一般的なボーリング調査で広く取得されているRQD(Rock Quality Designation)に着目した。ただし,RQDは割れ目の数が同じでも,割れ目間隔によって数値が変わりうるため,岩体スケールの割れ目頻度の多寡を1mごとに求められるRQDに基づいて直接的に評価することは困難である可能性が考えられる。このため,本検討では,これまでに数多くの深層ボーリングが行われている土岐花崗岩を対象として,ボーリング孔ごとにRQDの平均値を計算し,割れ目頻度と比較した。
<方法>
RQDは一般には回収されたコア観察に基づいて計算される。しかし,この方法では,コアロスの発生や掘削・回収時の割れ目の形成によって, RQDが適切に見積もられない可能性がある。一方で,掘削後にボアホールテレビ(BTV)を用いた孔壁観察によって適切に割れ目の状態を捉えることができ,孔壁観察の結果からRQDを計算した方が岩盤特性をより適切に評価できるとされている(鈴木・梶原,1997)。
そこで,本検討では,瑞浪超深地層研究所周辺の地表から掘削したボーリング19孔(鉛直孔17孔,傾斜孔2孔)と,研究所の研究坑道から掘削したボーリング5孔(鉛直孔1孔,水平孔4孔)において, BTVを用いた孔壁観察で確認された割れ目データ(石橋・笹尾,2015,2016)に基づいてRQDを計算した。対象としたボーリングの花崗岩中の総掘削長は16,180mであり,確認された割れ目は合計43,658本である(なお,割れ目のうち,孔壁画像上で破断面の形状,連続性ともに極めて明瞭な割れ目(明瞭割れ目)は24,737本であった)。
本検討では,各割れ目の交差深度(傾斜している場合には,中間の深度を使用)を抽出し,2つの割れ目の交差深度が10cm以上の区間長を掘削長1mごとに求めることによりRQDを計算し,それをボーリング孔ごとに平均した。
<結果と考察>
地表からのボーリングと研究坑道内からのボーリングのBTV調査で得られた割れ目データに基づくと,ボーリング孔ごとのRQDの平均(以下,BH平均RQDと呼ぶ)は79.9~98.6,割れ目頻度(1m当たりの割れ目の数)の平均(以下,BH平均割れ目頻度と呼ぶ)は0.7~6.6本/mであった(明瞭割れ目のみでは,BH平均RQDは89.5~99.1,BH平均割れ目頻度は0.5~3.8本/m)。BH平均RQDとBH平均割れ目頻度の間には明瞭な相関があり,BH平均RQDの平均値が大きいほどBH平均割れ目頻度が低く,BH平均RQDが小さいほどBH平均割れ目頻度が高いことが明らかになった。
本検討で使用したボーリングの花崗岩中の掘削長は,地表からのもので329~1,185m,坑内からの鉛直孔で331m,水平孔で30~106mであり,BH平均RQDとBH平均割れ目頻度の関係はボーリング孔の傾斜角や掘削長には影響を受けないと推定される。そこで,検討に使用したボーリング孔ごとのデータを,掘削の傾斜角に関係なく,掘削長100mごとに分割し,RQDの平均と割れ目頻度の平均を比較した。その結果,掘削長100mごとのRQDの平均は68.0~100.0(平均92.9),1m当たりの割れ目頻度の平均は0~9.2本/m(平均2.8本/m)であった。このRQDと割れ目頻度を比較した結果,BH平均RQDとBH平均割れ目頻度との関係に比べてばらつきが若干大きくなるものの,両者には相関が認められた。
この結果から,1mごとに得られるRQDを適当な長さで平均することによって,割れ目の多寡の評価に活用できると考えられる。今後は,どの程度以上の区間長であれば割れ目頻度を適切に評価できるかを検討するとともに,他岩体のデータも加味した検討が必要である。
文献
石橋・笹尾(2015,2016)日本原子力研究開発機構研究開発報告書類,JAEA-Data/Code 2015-004,8p.および2016-009,10p.
日本学術会議 高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会 暫定保管に関する技術的検討分科会(2014)報告 高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討,65p.
鈴木・梶原(1997)応用地質技術年報,No.19.61-70.
高レベル放射性廃棄物の地層処分において,日本学術会議(2014)は,「放射性核種が地下水によって人間環境に運ばれるかも知れないことは大きな不安要因で」あることから,「割れ目の少ない岩盤を処分場候補地とすることが望まし」く,それには「地質履歴から割れ目の少ない岩盤を探す論理立てを確立することが必須である」としている。このためには,まずは国内の岩盤(岩体)での割れ目の分布状態を知る必要があるが,割れ目の分布を調査した事例は限られている。そこで,本検討では,割れ目を評価するための代替情報として,一般的なボーリング調査で広く取得されているRQD(Rock Quality Designation)に着目した。ただし,RQDは割れ目の数が同じでも,割れ目間隔によって数値が変わりうるため,岩体スケールの割れ目頻度の多寡を1mごとに求められるRQDに基づいて直接的に評価することは困難である可能性が考えられる。このため,本検討では,これまでに数多くの深層ボーリングが行われている土岐花崗岩を対象として,ボーリング孔ごとにRQDの平均値を計算し,割れ目頻度と比較した。
<方法>
RQDは一般には回収されたコア観察に基づいて計算される。しかし,この方法では,コアロスの発生や掘削・回収時の割れ目の形成によって, RQDが適切に見積もられない可能性がある。一方で,掘削後にボアホールテレビ(BTV)を用いた孔壁観察によって適切に割れ目の状態を捉えることができ,孔壁観察の結果からRQDを計算した方が岩盤特性をより適切に評価できるとされている(鈴木・梶原,1997)。
そこで,本検討では,瑞浪超深地層研究所周辺の地表から掘削したボーリング19孔(鉛直孔17孔,傾斜孔2孔)と,研究所の研究坑道から掘削したボーリング5孔(鉛直孔1孔,水平孔4孔)において, BTVを用いた孔壁観察で確認された割れ目データ(石橋・笹尾,2015,2016)に基づいてRQDを計算した。対象としたボーリングの花崗岩中の総掘削長は16,180mであり,確認された割れ目は合計43,658本である(なお,割れ目のうち,孔壁画像上で破断面の形状,連続性ともに極めて明瞭な割れ目(明瞭割れ目)は24,737本であった)。
本検討では,各割れ目の交差深度(傾斜している場合には,中間の深度を使用)を抽出し,2つの割れ目の交差深度が10cm以上の区間長を掘削長1mごとに求めることによりRQDを計算し,それをボーリング孔ごとに平均した。
<結果と考察>
地表からのボーリングと研究坑道内からのボーリングのBTV調査で得られた割れ目データに基づくと,ボーリング孔ごとのRQDの平均(以下,BH平均RQDと呼ぶ)は79.9~98.6,割れ目頻度(1m当たりの割れ目の数)の平均(以下,BH平均割れ目頻度と呼ぶ)は0.7~6.6本/mであった(明瞭割れ目のみでは,BH平均RQDは89.5~99.1,BH平均割れ目頻度は0.5~3.8本/m)。BH平均RQDとBH平均割れ目頻度の間には明瞭な相関があり,BH平均RQDの平均値が大きいほどBH平均割れ目頻度が低く,BH平均RQDが小さいほどBH平均割れ目頻度が高いことが明らかになった。
本検討で使用したボーリングの花崗岩中の掘削長は,地表からのもので329~1,185m,坑内からの鉛直孔で331m,水平孔で30~106mであり,BH平均RQDとBH平均割れ目頻度の関係はボーリング孔の傾斜角や掘削長には影響を受けないと推定される。そこで,検討に使用したボーリング孔ごとのデータを,掘削の傾斜角に関係なく,掘削長100mごとに分割し,RQDの平均と割れ目頻度の平均を比較した。その結果,掘削長100mごとのRQDの平均は68.0~100.0(平均92.9),1m当たりの割れ目頻度の平均は0~9.2本/m(平均2.8本/m)であった。このRQDと割れ目頻度を比較した結果,BH平均RQDとBH平均割れ目頻度との関係に比べてばらつきが若干大きくなるものの,両者には相関が認められた。
この結果から,1mごとに得られるRQDを適当な長さで平均することによって,割れ目の多寡の評価に活用できると考えられる。今後は,どの程度以上の区間長であれば割れ目頻度を適切に評価できるかを検討するとともに,他岩体のデータも加味した検討が必要である。
文献
石橋・笹尾(2015,2016)日本原子力研究開発機構研究開発報告書類,JAEA-Data/Code 2015-004,8p.および2016-009,10p.
日本学術会議 高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会 暫定保管に関する技術的検討分科会(2014)報告 高レベル放射性廃棄物の暫定保管に関する技術的検討,65p.
鈴木・梶原(1997)応用地質技術年報,No.19.61-70.