JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG32] [JJ] 原子力と地球惑星科学

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、佐藤 努(北海道大学工学研究院)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)

[HCG32-P06] 花崗岩地域における地下水の長期変遷に関わる地球化学解析

*村上 裕晃1渡邊 隆広1岩月 輝希1 (1.国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)

キーワード:花崗岩、地下水、地球化学解析

はじめに
高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わる安全評価では、地下水の塩濃度やpH及び酸化還元状態といった地球化学特性の長期的な変動幅に基づき放射性元素の挙動を推測する必要がある。地下水の地球化学特性は、地下水流動に伴う複数の水質の異なる地下水の混合や岩盤中での水-鉱物-微生物の相互反応などにより形成される。筆者らは、これまでに長期的な地球化学特性の推測手法の確度を向上させるために、岐阜県東濃地域の土岐花崗岩中の地下水を対象として、過去100万年間にわたる長期的な自然現象(気候変動に伴う涵養量変化や隆起・侵食に伴う地形変化など)を考慮した地下水流動特性の長期変動性解析や、地球化学特性の長期的な形成プロセスに関わる水-鉱物反応の熱力学的解析を行ってきた。本報告では後者の成果について報告する。
方法
地下水の滞留時間が異なる二つの領域を対象として、地球化学計算コードPHREEQC(熱力学データベース: PHREEQC.dat)により、主に地下水のpHと水質を理論的に再現することで、長期的な水質の形成に関わる主要なプロセスについて考察した。具体的には、起源となる表層水と花崗岩中の鉱物(斜長石(albite及びanorthite)、カリ長石(K-feldspar)、石英(quartz)、黒雲母(K-mica)、緑泥石(chlorite)、方解石(calcite)、イライト(illite)など)との水-鉱物反応の熱力学的解析を行った。
結果・考察
1) 相対的な地下水流動域
本研究地域においては、月吉断層の北側に滞留時間が数千年~1万数千年を示す地下水が分布している。当該領域の地下水に対する各鉱物の飽和指数を予備解析したところ、albite、anorthite、calcite及びquartzが地下水に対して未飽和~飽和平衡状態にあると推定された。ただし、quartzは表層水に対しても飽和状態であったため、その溶解反応が地下水の水質形成に与える影響は相対的に小さいと推測される。そこで、実際の地下水の飽和指数と同等の飽和指数になるまで、表層水にalbite、anorthite及びcalciteを溶解させることで、地下水のpH及び溶存イオン濃度を再現できるか確認した。その結果、pHは8.2~9.3と算出され、対象領域に分布する地下水のpHの実測値(8.4~10.1)と概ね整合的な値を得た。Ca、Al、Siの各溶存イオン濃度については、地下水の実測データと概ね整合した。
2) 相対的な地下水滞留域
本研究地域においては、月吉断層の南側の地下深部に滞留時間が数万年以上を示す地下水が分布している。この領域の地下水は、主に塩濃度の異なる複数の地下水の混合によりその水質が形成されているため、水-鉱物反応プロセスの影響を受けやすい。そのため、混合プロセスの影響が小さいpHについてのみ解析した。滞留時間が相対的に長い当該領域の地下水は、albite、anorthite、calcite、quartzに加えてK-feldsparが未飽和~飽和平衡状態である。そこで、表層水に対して実際の地下水の飽和指数と同等の飽和指数になるまでこれらの鉱物を溶解させ、地下水のpHを熱力学解析により再現した。その結果、pHは8.2~9.3と算出され、対象領域に分布する地下水のpHの実測値(8.2~9.2)とよく一致した。
まとめ
土岐花崗岩の鉱物組み合わせ及び地下水の各鉱物に対する飽和指数を考慮し、地下水の滞留時間が数千年~1万数千年の地下水と数万年以上の地下水の地球化学特性を熱力学的に計算した。その結果、長期的な地下水のpHに関わる主要な水-鉱物反応を推定することができ、どちらの領域の地下水もpHがアルカリ性を示すことが明らかとなった。本解析で取り扱った鉱物は花崗岩を構成する代表的な鉱物であり、花崗岩地域において天水由来の表層水が地下に浸透して地下水が形成される場合、地下水のpHは普遍的にアルカリ性になることが示唆された。地下水の地球化学特性の長期的な変動幅を推測する際には、本研究で用いた手法が有効である。
謝辞
本報告は経済産業省資源エネルギー庁からの委託事業である「平成28年度地層処分技術調査等事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)」の成果の一部である。