JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG32] [JJ] 原子力と地球惑星科学

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、佐藤 努(北海道大学工学研究院)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)

[HCG32-P07] 日本列島における地質学的ひずみ速度の推定

*渡部 豪1浅森 浩一1 (1.日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)

キーワード:活断層、地質学的ひずみ速度、ディスロケーション

日本列島は,プレートの沈み込みにより長期にわたって短縮変形を受け続けている.このような変形は,複雑な地形・地質構造で特徴付けられる日本列島の地質環境に影響を与えていると考えられる.日本列島における第四紀後期の地殻変動には,一様継続性と呼ばれる経験則(変位の方向の一様性や変位の等速性)が指摘されている(笠原・杉村, 1978; 松田, 1988).しかし,日本列島における三辺・三角測量やGNSS観測に基づく測地学的ひずみ速度と活断層データ等から推定された地質学的ひずみ速度には,一桁に及ぶ顕著な食い違いが認められること(池田, 1996; 鷺谷, 2004; Shen-Tu et al., 1995)が知られている.地層処分における将来の地質環境の予測・評価は,過去数万年~数百万年における自然現象の偏在性や変動傾向に基づき,将来へ外挿することが基本となる.そのため,特に外挿法による予測においては,対象とする領域における一様継続性の成立性を検討することも重要と考えられる.そこで本研究では,過去の地殻変動として,活断層の変位等の地形・地質学的な情報をディスロケーションモデルに適用することで地質学的ひずみ速度を推定し,現行の地殻変動を示す測地学的ひずみ速度との比較を行った.
 本研究では,産業技術総合研究所の活断層データを利用し,日本列島の地質学的ひずみ速度の推定を行った.ここでは,半無限弾性体を仮定し,Okada (1985) のディスロケーションモデルに従って,443セグメントの内陸活断層の断層パラメータ(1,000年間の平均変位速度,断層の走向・傾斜・長さ・位置等)を用いて,断層運動に伴う地表面の変位速度を計算した.なお,地表面の変位速度の算出地点として,約1,200点のGEONET 観測点の位置を採用している.続いて,Shen et al. (1996) の方法を用い,得られた変位速度に基づいて地質学的ひずみ速度を推定した.ここでは,緯度・経度方向に20 km毎に設定したグリッドに対して,直径40 km以内に含まれる変位速度を用いて,各グリッド近傍での平均的なひずみ速度を推定した.
 以上の解析により推定した内陸活断層の運動に伴う地殻変動は,水平方向で最大4 mm/yr,上下方向では最大で1 mm/yrの沈降及び3 mm/yrの隆起を示す.このうち上下変動については,日本列島の多くの領域において0.3 mm/yr程度の隆起を示し,新潟-神戸ひずみ集中帯と東海地方(静岡県~愛知県)の太平洋側の領域では1 mm/yrの沈降を示す.また,GPS速度や水準測量による結果(村上・小沢, 2004)では,東北日本の太平洋側において5 mm/yr程度の沈降が示されており,東北地方の太平洋側では長期的に見て隆起,短期的には沈降という従来からの指摘については,本研究の結果においても同様に,地質学的な推定結果と測地学的な推定結果の違いが認められた.その一方で,ひずみ速度の主軸分布においては,新潟-神戸ひずみ集中帯での北西-南東方向の短縮,九州地方(島原-別府地溝帯)での南北伸長が認められ,測地学的ひずみ速度の主軸分布(例えば,Sagiya et al., 2000)と調和的な傾向を示すことが明らかになった.また,本手法には粘弾性の考慮等の課題があるが,このようなアプローチを用いることで一様継続性の検討において有用な情報を与えることができると考えられる.

引用文献:笠原・杉村 (1978): 岩波講座地球科学10, 296p. 松田 (1988): 地球, 10, 599-603. 池田 (1996): 活断層研究, 15, 93-99. 鷺谷 (2004): 地球, 46, 183-189. Shen-Tu et al. (1995): JGR, 100, 24275-24293. Okada (1985): BSSA, 75, 1135-1154. Shen et al. (1996): JGR, 101, 27957-27980. 村上・小沢 (2004): 地震2, 57, 209-231. Sagiya et al. (2000): Pageogh, 157, 2303-2322.

謝辞:本発表は,経済産業省資源エネルギー庁委託事業「地層処分技術調査等事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)」の成果の一部である.また解析には,産業技術総合研究所の活断層データを使用させて頂きました.記して感謝致します.