11:30 〜 11:45
[HCG37-14] 2016年熊本地震の地震断層の分布形状と家屋被害
キーワード:熊本地震、断層の分布形状、家屋被害
2016年熊本地震は,主として既知の布田川−日奈久断層の北半部の活断層の再活動によって引き起こされたものであるが,活断層が認定されていなかった場所にも顕著な地震断層が出現した.この地震の特徴の一つとして,甚大な被害が地震断層から数百メートル以内の範囲で発生したことが挙げられる(藤原,2017など).本報告では,地震断層の分布形状と建物被害の分布の特徴について解析し,地表において破壊的な揺れの発生場所を活断層の分布形状をもとに予測する手法を検討する資料とする.
熊本地震の地震断層の分布については,大学共同調査チーム(熊原他,2016)や産総研(Shirahama et al., 2016)などによってまとめられており,布田川断層北部に沿った右横ずれ断層,布田川断層の南に位置する出ノ口断層などに沿った正断層のほかに,益城町上陳から益城町市街地にかけて右横ずれ断層や益城町下陳から北西に伸びる左ずれ断層が沖積低地に新たに出現した.さらに,布田川断層の北東延長部の南阿蘇村黒川周辺では右横ずれ断層や正断層,阿蘇カルデラから南西に延びる二重峠地震帯(須藤・池部,2001)に沿って,カルデラ内北西部低地では複数の平行する正断層からなる地変,大津町高尾野では小規模な断層が出現するなど,多様で複雑な地震断層が認められた.
巨視的に見ると,被害は震源域から遠ざかるほど地震の揺れは小さくなり家屋被害が小さくなるという傾向が認められるが,微視的にみると震源域の大きな家屋被害は地震断層直上と地震断層に沿った狭い範囲に偏在・集中する.前者は断層のずれによる建物破壊であり,地震断層直上に位置している家屋に普遍的に認められるのに対して,後者は地震断層に沿ってどこにでも認められる訳ではなく,益城町木山地区,南阿蘇村黒川地区などの横ずれ変位が卓越する地震断層の末端部に偏在する特徴がある.このような場所では,地震断層とほぼ一致する走向に延びる数多くの亀裂が集中的に地表に出現しており,小規模な「震災の帯」あるいは「亀裂集中帯」とも言える狭い範囲で甚大な被害が集中的に発生している.布田川断層とそれから分岐する地震断層は,益城町藤堂付近から南と北に向かって分岐する平面形状を示しており,中田他(1998)の破壊伝播予測モデルに対応して,これらの被害集中地域ではディレクティビティ効果による地震動の増幅が起こったとも考えられる.しかし,このような断層破壊過程は,地震波形をから提示された震源過程のモデル(京都大学防災研究所,2016・防災科学技術研究所,2016など)と一致していない問題が存在する.
今回の地震で,布田川断層の地震断層の近傍で大きな建物被害が発生した区間は限られ,被害の少なさの方が目立った.特に横ずれが卓越する断層の直線的なトレースでは,極近傍でも建物が倒壊した例は殆どなかった.これは,断層破壊がスムーズに伝播したことを暗示している.これに対して,益城町平田周辺などの地震断層がステップするなど破壊の伝播が阻害されるような場所では建物被害が目立ち,地震動が局地的に大きくなった可能性がある.これに対して,左横ずれ変位を伴う地震断層が分岐する場所では建物被害が特に大きいという傾向は認められなかった.
一方,布田川断層の南に平行する出ノ口断層などの正断層変位が卓越した地震断層に沿っては,断層直上を除けば建物の倒壊は認められず,これらの断層に沿っては破壊的な地震動は発生しなかったと言える.
正断層変位が卓越する地震断層は,阿蘇カルデラないで幅広い断層帯を形成している.ここでも,断層直上の家屋被害は顕著であるが地震動は比較的小さく,断層近傍の墓地でも暮石の転倒も軽微であることが確認されている.南阿蘇村黒川地区の甚大な建物被害が発生した集落の南のゴルフ場や別荘地でも,数条の平行する正断層性の地震断層が出現した.ここでも,地盤破壊に伴う家屋被害は顕著であったが,地震動による家屋被害は比較的軽微であった.
このように,地震断層に沿っては強い地震動が発生する場所とそうでないところがあり,その場所を断層の分布形状からある程度推定することが可能であることがわかった.また,甚大な建物被害は,地震断層から数百メートル以内の幅狭い範囲に集中することから,破壊的な強振動が地震断層に沿って地下の極浅部から発生したと考えることができる.
熊本地震の地震断層の分布については,大学共同調査チーム(熊原他,2016)や産総研(Shirahama et al., 2016)などによってまとめられており,布田川断層北部に沿った右横ずれ断層,布田川断層の南に位置する出ノ口断層などに沿った正断層のほかに,益城町上陳から益城町市街地にかけて右横ずれ断層や益城町下陳から北西に伸びる左ずれ断層が沖積低地に新たに出現した.さらに,布田川断層の北東延長部の南阿蘇村黒川周辺では右横ずれ断層や正断層,阿蘇カルデラから南西に延びる二重峠地震帯(須藤・池部,2001)に沿って,カルデラ内北西部低地では複数の平行する正断層からなる地変,大津町高尾野では小規模な断層が出現するなど,多様で複雑な地震断層が認められた.
巨視的に見ると,被害は震源域から遠ざかるほど地震の揺れは小さくなり家屋被害が小さくなるという傾向が認められるが,微視的にみると震源域の大きな家屋被害は地震断層直上と地震断層に沿った狭い範囲に偏在・集中する.前者は断層のずれによる建物破壊であり,地震断層直上に位置している家屋に普遍的に認められるのに対して,後者は地震断層に沿ってどこにでも認められる訳ではなく,益城町木山地区,南阿蘇村黒川地区などの横ずれ変位が卓越する地震断層の末端部に偏在する特徴がある.このような場所では,地震断層とほぼ一致する走向に延びる数多くの亀裂が集中的に地表に出現しており,小規模な「震災の帯」あるいは「亀裂集中帯」とも言える狭い範囲で甚大な被害が集中的に発生している.布田川断層とそれから分岐する地震断層は,益城町藤堂付近から南と北に向かって分岐する平面形状を示しており,中田他(1998)の破壊伝播予測モデルに対応して,これらの被害集中地域ではディレクティビティ効果による地震動の増幅が起こったとも考えられる.しかし,このような断層破壊過程は,地震波形をから提示された震源過程のモデル(京都大学防災研究所,2016・防災科学技術研究所,2016など)と一致していない問題が存在する.
今回の地震で,布田川断層の地震断層の近傍で大きな建物被害が発生した区間は限られ,被害の少なさの方が目立った.特に横ずれが卓越する断層の直線的なトレースでは,極近傍でも建物が倒壊した例は殆どなかった.これは,断層破壊がスムーズに伝播したことを暗示している.これに対して,益城町平田周辺などの地震断層がステップするなど破壊の伝播が阻害されるような場所では建物被害が目立ち,地震動が局地的に大きくなった可能性がある.これに対して,左横ずれ変位を伴う地震断層が分岐する場所では建物被害が特に大きいという傾向は認められなかった.
一方,布田川断層の南に平行する出ノ口断層などの正断層変位が卓越した地震断層に沿っては,断層直上を除けば建物の倒壊は認められず,これらの断層に沿っては破壊的な地震動は発生しなかったと言える.
正断層変位が卓越する地震断層は,阿蘇カルデラないで幅広い断層帯を形成している.ここでも,断層直上の家屋被害は顕著であるが地震動は比較的小さく,断層近傍の墓地でも暮石の転倒も軽微であることが確認されている.南阿蘇村黒川地区の甚大な建物被害が発生した集落の南のゴルフ場や別荘地でも,数条の平行する正断層性の地震断層が出現した.ここでも,地盤破壊に伴う家屋被害は顕著であったが,地震動による家屋被害は比較的軽微であった.
このように,地震断層に沿っては強い地震動が発生する場所とそうでないところがあり,その場所を断層の分布形状からある程度推定することが可能であることがわかった.また,甚大な建物被害は,地震断層から数百メートル以内の幅狭い範囲に集中することから,破壊的な強振動が地震断層に沿って地下の極浅部から発生したと考えることができる.