JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] [EE] Natural hazards impacts on the society, economics and technological systems

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 106 (国際会議場 1F)

コンビーナ:PETROVA ELENA(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)、座長:Petrova Elena(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、座長:松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)

16:30 〜 16:45

[HDS10-05] 千葉県の海岸砂丘における酒蔵の生態系(文化的)サービスとその経済効果

*金子 是久1 (1.北総生き物研究会)

キーワード:Ecosystem Service, Coastal Sand System, Sales Figures, Japanese Sake Brewery, Economic Effect

1.はじめに
 海岸砂丘は、海と陸との間の緩衝帯であり、地下10m前後には淡水層が存在している。淡水層の水は、海岸砂丘にある多くの酒蔵が酒造りの仕込み水として利用しており、生態系(文化的)サービスとしての役割を果たしている。大正時代に千葉県の海岸砂丘に位置していた酒蔵数は59蔵と、現在の約6倍であった。当時は、自然海岸も多く残され、インフラ整備が進んでいなく、物流が発達していなかったことで、地域の人々は、近隣の酒蔵からお酒を購入していた。これらのことから、大正時代の酒蔵は、海岸砂丘の自然の恵みを活かした酒造りを行い、商売も繁盛していたものと考えられる。しかし、当時の酒蔵の環境と売上高について詳細に調べた研究例はないことから、本件旧では、海岸の豊かな自然を利用した酒造りとその経済的効果について検証した。

2.算出方法
当時の酒蔵の売上高を現在(平成28年)の金額に換算した。
1円(大正11年)=16186.6667円(平成28年)
(米の価値を基準に計算 http://nenbetu.atukan.com/)
納税額=課税売上高×0.08(消費税)-課税売上高×0.08(消費税)×0.7
(みなし仕入率:製造業)
課税売上高=納税額/0.024

3.結果および考察
 東京湾沿いにあった酒蔵の大正11年の売上高を平成28年の金額に換算した結果、2件の酒蔵が売上高5億を超えていた。その他の2件の酒蔵が売上高3億を超え、5件の酒蔵が売上高1億円を超えていた。今回、調査した15件の酒蔵の内、9件が1億円を超えていた。
一方、2010年の全国酒蔵の上位売上高(全国版)ランク(株式会社東京商工リサーチ)をみると、売上高1~5億円未満の酒蔵は246社と全体の47.0%であり、売上高5億~10億円未満の酒蔵は、42社と全体の8%であった。調査地の酒蔵の売上高(平成28年の金額に換算)と比較すると、売上高5億円以上の2件の酒蔵は、全国酒蔵の売上げ上位81社の中に含まれていた。これについては、大正時代における国民のアルコールの嗜好が日本酒に限られていたなどの時代背景の違いもあるが、豊かな海岸自然の恵みを利用した酒造りを行い、その経済的効果もみられたと推察される。