[HDS16-P09] 震源過程解析のすべり分布を使用した、2016年11月福島県沖の地震の津波解析
キーワード:2016年11月の福島県沖の地震の津波、震源過程解析
2016年11月22日に福島県沖でMw6.9の地震が発生した。この地震により、仙台港で1.4mなど、北海道から和歌山までの広い範囲で津波が観測された(気象庁, 2016)。
この津波を再現するため、まず一様すべりの矩形断層(一枚断層)を仮定して津波数値シミュレーションを行った。断層のパラメーターは、CMT解析のメカニズムとマグニチュードのスケーリング則で与えた断層サイズ・すべり量を用いた。この結果では、沿岸の仙台港等の観測記録の第一波でみられるような短周期の津波に比べて、波長が長くなり合わない。このため、より小さな波源の断層サイズであった可能性が考えられた。
そこで本研究では、短波長のすべり不均質を推定する震源過程解析の結果を津波の評価に用いた。まず、震源過程解析で小断層上のすべり分布を求める。ここで、震源過程解析に与えた破壊開始点は、一元化震源(気象庁, 2016, 地震・火山月報(防災編))を参考に、北緯37.353度、東経141.603度、深さ10kmとした。断層面は、複数試した結果、観測波形との一致が良いF-netのCMT解析解を採用し、走向:47度、傾斜:38度、初期すべり角: -90度、で与えた。その後、その個々の小断層による海底面の地殻変動を計算した。その地殻変動を足し合せたものを海面水位として与え、津波を計算した。ここで、海面水位は震源時に瞬間的に与えられるとした。地形データは、最小で50mメッシュ(内閣府中央防災会議, 2003)を用いた。小断層による地震モーメントを足し合わせた結果のMwは7.2(剛性率30GPa)、7.0(剛性率15GPa)であった。
計算で求めた沿岸の津波波形は、観測された津波の短周期の波の形状や振幅を良く表した。計算で得られた第一波と反射波の位相を観測のそれに合わせるため、初期水位を南西方向に平行移動させた。その結果、津波の波源は余震分布により近くなるとともに、沿岸の津波観測記録と非常に良く合う結果が得られた。最終的に、西へ0.07度、南へ0.12度だけ平行移動した場合がもっとも観測記録に合った。震源過程解析の結果は、破壊開始点の位置により左右される場合がある。今回の事例の場合、破壊開始点を緯度経度で0.1度程度平行移動させても、結果として得られるすべり分布には大きな影響がなかった。
さらに、最適な初期水位に合うような断層を一枚断層で与えるとどうなるかを調べた。予備的な解析の結果、Mw6.9に対して断層長さ20km、幅15km、すべり量6.3mという、Mw 6.9のスケーリング則からはかなり外れた断層を設定する必要があることが分かった。ただし、ここで剛性率は15GPaを仮定した。このような大きなすべり量は、局所的には震源過程解析のすべり分布でも表れており、妥当な範囲にあると考えられる。
今回のようなマグニチュードによる断層サイズやすべり量のスケーリング則から外れた地震の場合、震源過程解析による小断層のすべり分布の情報を用いた津波の波源が効果的である。また、解析を即時的に行う場合、水平位置の不確定性に対応するため、グリッドサーチである程度の誤差を許容した計算を複数行い、結果を取り出すという方法が考えられる。 謝辞: 津波数値解析にはTUNAMI-N2を用いました。
この津波を再現するため、まず一様すべりの矩形断層(一枚断層)を仮定して津波数値シミュレーションを行った。断層のパラメーターは、CMT解析のメカニズムとマグニチュードのスケーリング則で与えた断層サイズ・すべり量を用いた。この結果では、沿岸の仙台港等の観測記録の第一波でみられるような短周期の津波に比べて、波長が長くなり合わない。このため、より小さな波源の断層サイズであった可能性が考えられた。
そこで本研究では、短波長のすべり不均質を推定する震源過程解析の結果を津波の評価に用いた。まず、震源過程解析で小断層上のすべり分布を求める。ここで、震源過程解析に与えた破壊開始点は、一元化震源(気象庁, 2016, 地震・火山月報(防災編))を参考に、北緯37.353度、東経141.603度、深さ10kmとした。断層面は、複数試した結果、観測波形との一致が良いF-netのCMT解析解を採用し、走向:47度、傾斜:38度、初期すべり角: -90度、で与えた。その後、その個々の小断層による海底面の地殻変動を計算した。その地殻変動を足し合せたものを海面水位として与え、津波を計算した。ここで、海面水位は震源時に瞬間的に与えられるとした。地形データは、最小で50mメッシュ(内閣府中央防災会議, 2003)を用いた。小断層による地震モーメントを足し合わせた結果のMwは7.2(剛性率30GPa)、7.0(剛性率15GPa)であった。
計算で求めた沿岸の津波波形は、観測された津波の短周期の波の形状や振幅を良く表した。計算で得られた第一波と反射波の位相を観測のそれに合わせるため、初期水位を南西方向に平行移動させた。その結果、津波の波源は余震分布により近くなるとともに、沿岸の津波観測記録と非常に良く合う結果が得られた。最終的に、西へ0.07度、南へ0.12度だけ平行移動した場合がもっとも観測記録に合った。震源過程解析の結果は、破壊開始点の位置により左右される場合がある。今回の事例の場合、破壊開始点を緯度経度で0.1度程度平行移動させても、結果として得られるすべり分布には大きな影響がなかった。
さらに、最適な初期水位に合うような断層を一枚断層で与えるとどうなるかを調べた。予備的な解析の結果、Mw6.9に対して断層長さ20km、幅15km、すべり量6.3mという、Mw 6.9のスケーリング則からはかなり外れた断層を設定する必要があることが分かった。ただし、ここで剛性率は15GPaを仮定した。このような大きなすべり量は、局所的には震源過程解析のすべり分布でも表れており、妥当な範囲にあると考えられる。
今回のようなマグニチュードによる断層サイズやすべり量のスケーリング則から外れた地震の場合、震源過程解析による小断層のすべり分布の情報を用いた津波の波源が効果的である。また、解析を即時的に行う場合、水平位置の不確定性に対応するため、グリッドサーチである程度の誤差を許容した計算を複数行い、結果を取り出すという方法が考えられる。 謝辞: 津波数値解析にはTUNAMI-N2を用いました。