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[HDS17-07] 上高地東方の稜線上に発達する山上凹地埋積過程:長塀尾根と徳本峠周辺の対比
キーワード:山体重力変形地形、二重山稜、地すべり
北アルプス,上高地東方の標高2,500m程度の蝶ヶ岳〜大滝山〜徳本峠の主稜線やその支稜は,下方斜面が急峻であるにもかかわらず丸みを帯びた広い頂部を持っている.特に,稜線がNE-SW方向に延びる部分は広い尾根となり,多重山稜,山上凹地などの山体重力変形地形が発達している.これは,本地域の基盤岩が美濃帯のジュラ紀付加体からなり,その一般走向がNE-SWであるためである.長塀尾根の標高2,000m付近(A地点)と徳本峠の北東約2kmの標高2,150m(B地点)に位置する山上凹地を埋積する堆積物をハンドオーガーボーリングにより採取し,岩相記載,火山ガラス屈折率の測定を行った.その結果,前者は泥質堆積物を主体とするのに対し,後者は火山性の粗粒砂からシルトからなることが明らかとなった.A地点の2本のボーリング試料の深度67cm, 90cm付近には火山ガラスの産出ピークが認められ,両方とも鬼界アカホヤ火山灰(7,300 cal BP)起源であると思われる.一方,B地点のボーリングコアには火山ガラスの産出ピークは認められず,最下部(深度190cm)の試料も鬼界アカホヤ火山灰起源の火山ガラスを含んでいる.しかし,火山屑砕物の主体は粗粒な火砕物であり,その粒度や鉱物組成から,2,000-5,000年前に活発に活動した西南西約9.5kmに位置する焼岳からもたらされたものと推定される.また,A, B両地点の凹地埋積速度は,Aが約0.1mm/y,Bが0.26mm/y以上と大きく異なる.これは焼岳からの距離や方位の差に起因するものと考えられる.