[HDS17-P02] SAR干渉解析による斜面変動検出-四国山地、朝日山地の事例
キーワード:SAR干渉解析、斜面変動、地すべり、地表変位
はじめに:国土地理院がJAXAの陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)のSARデータを用いて全国を対象に実施しているSAR干渉解析の画像においては,山地斜面で数cm程度の斜面変動を示すと考えられる位相変化が多数確認できる.このような位相変化が地すべりブロック等の斜面のクリープ現象を捉えているという報告はこれまでにも多数あるが(Squarzoni et al., 2003;宇根ほか,2008; Delacourt et al., 2009;佐藤ほか,2012など),衛星の観測性能上,すべての斜面変動が捉えられるわけではない.そのため,どのような観測条件,地形・地質条件,土地被覆条件で,どの程度の位相変化が現れている際に,どのような地表変位が現地に現れているのかの情報を蓄積していくことが,SAR干渉解析を用いた今後の斜面変動監視の方法を確立するうえで重要である.
そこで,我々はこれまでにも斜面変動性の位相変化地点の現地調査や現地観測データとの比較を行ってきたが(Nakano et al., 2016;山中ほか,2016),本発表では四国山地(高知県)と朝日山地(山形県)で確認された位相変化の特徴と現地調査結果で明らかになった地表変位の特徴について報告する.
現地調査結果:現地調査は,四国山地は2016年3月9~11日,朝日山地は2016年11月14~16日に実施した.
(1)四国山地:現地調査した4地点のうち,2地点(SK-1:本山町奥白髪谷地点,SK-2:いの町手箱谷地点)で明瞭な地表変位を確認した.SK-1地点では,SAR干渉画像(2014年10月~2015年10月)において衛星から8cm程度遠ざかる変動が検出されていたが,位相変化領域に接する林道脇のコンクリート擁壁に比較的新しい複数の開口亀裂がみられ,位相変化と調和的な斜面ブロックの変動が生じていることが伺えた.また,SK-2地点は地すべり地で,古くから地すべり対策工事が実施されていたが,SAR干渉画像(2014年9月~2015年6月)では7cm程度の衛星から遠ざかる変動が検出されており,現地の樹木の傾倒などからも地すべりが継続していることが伺えた.
(2)朝日山地:現地調査した5地点のうち,2地点(AS-1:大江町月布地点,AS-2:西川町上小沼地点)において明瞭な地表変位を確認した.AS-1地点では,2014年9月~2015年6月の期間などを含め,複数時期のSAR干渉画像において継続して広範な位相変化が検出されており,位相変化を横切る林道のコンクリート舗装部において,位相変化が示す変位の向きと調和的な段差・開口亀裂が確認された.AS-2地点は地すべり対策工事の対象地すべりで,2016年1月~4月の期間などを含め,複数時期のSAR干渉画像において位相変化が確認されていた.現地では,地すべり土塊の側方崖に位置する位相変化領域縁を横切るアスファルト道路とその脇の用水路において,位相変化の向きと調和的で明瞭な構造物の上下・右横ずれ変位が確認できた(図).ここでは,少なくとも3回の道路補修痕があり,最新の補修は2016年内に行われた可能性が高く,SAR干渉画像で検出した変動により生じた変位である可能性が高い.
まとめと課題:位相変化が生じていながら現地で地表変位が確認できなかった地点は,いずれも位相変化縁辺部に人工構造物がなかった地点であり,逆に位相変化が示す変動が確かであれば,SAR干渉解析により人間が地上では認識できないような変動を検出・監視できることを示している.ただ,今回のような事後調査では,現地で確認された地表変位がSAR干渉画像で捉えた変動そのものによって生じたかどうかが判断できないため,今後は現地での常時変動観測を併用した検証を検討したい.
謝辞:本研究で使用したALOS-2データの所有権は、JAXAにあります.これらのデータは,国土地理院とJAXAの間の協定に基づいて,JAXAから提供されたものです.
引用文献: Delacourt et al. (2009): Sensors, 9, 616-630;Nakano et al. (2016): The International Archives of the ISPRS, XLI-B1, 1201-1205;佐藤ほか(2012):日本地すべり学会誌,49(2),61-67;Squarzoni et al. (2003): Eng Geol., 68(1-2), 53-66;宇根ほか(2008):日本地すべり学会誌,45 (2),125-131;山中ほか(2016):第8回土砂災害に関するシンポジウム論文集,55-60.
そこで,我々はこれまでにも斜面変動性の位相変化地点の現地調査や現地観測データとの比較を行ってきたが(Nakano et al., 2016;山中ほか,2016),本発表では四国山地(高知県)と朝日山地(山形県)で確認された位相変化の特徴と現地調査結果で明らかになった地表変位の特徴について報告する.
現地調査結果:現地調査は,四国山地は2016年3月9~11日,朝日山地は2016年11月14~16日に実施した.
(1)四国山地:現地調査した4地点のうち,2地点(SK-1:本山町奥白髪谷地点,SK-2:いの町手箱谷地点)で明瞭な地表変位を確認した.SK-1地点では,SAR干渉画像(2014年10月~2015年10月)において衛星から8cm程度遠ざかる変動が検出されていたが,位相変化領域に接する林道脇のコンクリート擁壁に比較的新しい複数の開口亀裂がみられ,位相変化と調和的な斜面ブロックの変動が生じていることが伺えた.また,SK-2地点は地すべり地で,古くから地すべり対策工事が実施されていたが,SAR干渉画像(2014年9月~2015年6月)では7cm程度の衛星から遠ざかる変動が検出されており,現地の樹木の傾倒などからも地すべりが継続していることが伺えた.
(2)朝日山地:現地調査した5地点のうち,2地点(AS-1:大江町月布地点,AS-2:西川町上小沼地点)において明瞭な地表変位を確認した.AS-1地点では,2014年9月~2015年6月の期間などを含め,複数時期のSAR干渉画像において継続して広範な位相変化が検出されており,位相変化を横切る林道のコンクリート舗装部において,位相変化が示す変位の向きと調和的な段差・開口亀裂が確認された.AS-2地点は地すべり対策工事の対象地すべりで,2016年1月~4月の期間などを含め,複数時期のSAR干渉画像において位相変化が確認されていた.現地では,地すべり土塊の側方崖に位置する位相変化領域縁を横切るアスファルト道路とその脇の用水路において,位相変化の向きと調和的で明瞭な構造物の上下・右横ずれ変位が確認できた(図).ここでは,少なくとも3回の道路補修痕があり,最新の補修は2016年内に行われた可能性が高く,SAR干渉画像で検出した変動により生じた変位である可能性が高い.
まとめと課題:位相変化が生じていながら現地で地表変位が確認できなかった地点は,いずれも位相変化縁辺部に人工構造物がなかった地点であり,逆に位相変化が示す変動が確かであれば,SAR干渉解析により人間が地上では認識できないような変動を検出・監視できることを示している.ただ,今回のような事後調査では,現地で確認された地表変位がSAR干渉画像で捉えた変動そのものによって生じたかどうかが判断できないため,今後は現地での常時変動観測を併用した検証を検討したい.
謝辞:本研究で使用したALOS-2データの所有権は、JAXAにあります.これらのデータは,国土地理院とJAXAの間の協定に基づいて,JAXAから提供されたものです.
引用文献: Delacourt et al. (2009): Sensors, 9, 616-630;Nakano et al. (2016): The International Archives of the ISPRS, XLI-B1, 1201-1205;佐藤ほか(2012):日本地すべり学会誌,49(2),61-67;Squarzoni et al. (2003): Eng Geol., 68(1-2), 53-66;宇根ほか(2008):日本地すべり学会誌,45 (2),125-131;山中ほか(2016):第8回土砂災害に関するシンポジウム論文集,55-60.