JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] [JJ] 地形

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 105 (国際会議場 1F)

コンビーナ:島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、座長:島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)

10:45 〜 11:00

[HGM04-05] 表層崩壊を引き起こす降雨条件の推定 -伊豆大島三原山における水文観測から-

*竹田 尚史1八反地 剛2松四 雄騎3寺嶋 智巳3 (1.日本工営株式会社、2.筑波大学 生命環境系、3.京都大学防災研究所)

キーワード:テフラ、レス、互層、飽和透水係数、飽和側方流、実効雨量

伊豆大島では2013年10月16日,台風26号に伴う豪雨によって多数の表層崩壊が発生した.豪雨による表層崩壊は,土層内の飽和側方流による間隙水圧の上昇により引き起こされることが知られており,現地観測に基づき表層崩壊発生場の雨水浸透過程を明らかにすることは,その発生を予測する上で重要である.そこで本研究では,伊豆大島の表層崩壊地周辺において,土層中の圧力水頭を観測し,雨水浸透過程を明らかにした.さらにその結果に基づき,表層崩壊の発生条件を検討した.崩壊地周辺では,地表から深さ2.5 mまでがテフラ・レスの互層により構成され,表層崩壊のすべり面はY1.0層と呼ばれるテフラ層であった.滑落崖におけるテフラ層は約70%が砂の粒径に相当する土粒子によって構成され,飽和透水係数は10-3 cm/sオーダーであった.一方,レス層は約50%がシルト・粘土の粒径に相当する土粒子によって構成され,飽和透水係数は10-4 cm/sオーダー以下であった.総雨量100 mm程度の降雨時,透水性が低いレス層内やその直上のテフラ層内において,飽和帯が発生した.
降雨時の圧力水頭最大値と降雨指標である実効雨量の関係を調べたところ,圧力水頭の上昇に対しては4時間半減期の実効雨量が圧力水頭の上昇に最も影響することが判明した.この結果と斜面安定解析から,対象の崩壊地では4時間半減期実効雨量で165 mm相当の降雨があった場合,斜面が不安定になると推定された.また,過去の災害履歴と降雨のデータから,4時間半減期実効雨量で217~253 mmの降雨があった場合,表層崩壊が発生すると推定された.2013年災害時の表層崩壊発生時刻の降水量は,4時間半減期実効雨量で250 mmを上回っており,斜面が不安定になるような高い間隙水圧が生じたと推察される.