JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] [JJ] 地形

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

[HGM04-P06] 日本列島における小規模扇状地の扇面面積と集水域面積の関係

*高場 智博1吉田 英嗣2 (1.明治大学大学院文学研究科地理学専攻、2.明治大学文学部)

キーワード:小規模扇状地、Ad/Af、堆積プロセス、活断層、集水域地質

湿潤変動帯におかれる日本列島には多くの扇状地が分布する.このうち河川掃流プロセスによって形成されるとされる大規模な扇状地は,斉藤(1982),斉藤(1988)やSaito and Oguchi(2005)などによってその分布や地形発達が網羅的に解明されている.しかし,土石流が主に形成する小規模な扇状地については,依然として検討の余地がある.そこで本研究では,日本の小規模扇状地を対象として,それらの扇面面積(Af)と集水域面積(Ad)との関係を示し(Ad=cAfn ),係数cおよびnの大小と幾つかの地形条件との関連から,小扇状地の発達条件を探った.対象とするのは日本全国15地域の503扇状地で,扇面面積が最大で約7 km2,多くが2 km2未満であり,扇面の侵食が著しいものは除外した.それら扇状地と集水域の範囲は航空写真判読によって定め,QGISを用いてマッピングしたのち面積を算出した.とくに地形条件に着目してAd/Afの関係を見出した結果,次のことがわかった.

1) 堆積プロセス(掃流および土石流)
 c値に大きな違いはみられなかったが(掃流:0.26,土石流:0.30),n値が掃流よりも土石流が大きくなった(掃流:0.66,土石流:0.87).これは甲府盆地の例(中山・高木,1987)と同様の傾向である.土石流の場合,土砂が谷口よりも下流に運ばれやすいため,Afが増加しやすいと考えられる.
2)山麓の活断層の有無
 n値に違いはみられなかったが(有:0.84,無:0.80),c値には違いが認められた(有:0.30,無:0.09).地震動によって集水域が荒廃すれば,土砂供給のポテンシャルが増加すると考えられ,このことを示していると解釈可能である.
3)最終氷期中の周氷河環境の有無
 周氷河環境は,c値およびn値を大きく違わせるほどには影響しないと考えられる.
4)集水域の地質
 深成岩,堆積岩,変成岩の順に,c値とn値の双方が大きい.これは米国南西部で報告されている関係(Hooke 1968, Lecce 1991)と同様の傾向である.