[HGM04-P08] 丘陵地谷頭部にみられる炭焼き由来の人工微細地形-宮城県大松沢丘陵の例-
キーワード:炭焼き、人工地形、谷頭部、丘陵
燃料革命以前、主に里山として利用されてきた日本の丘陵地では、炭焼きが広く行われてきた。その痕跡は、炭焼きが衰退して50年以上経過する現在でも、炭窯跡という人工微細地形として残存している場合がある。こうした炭焼き由来の微細地形(以下、炭焼き地形)は、里山(丘陵地)の自然環境と炭焼きとの関係を示す重要な指標となることが期待される。本発表では、宮城県の大松沢丘陵の谷頭部を事例地域に、炭焼き地形の規模や周辺の土層断面の観察から、炭焼きという人為作用が、地形変化や表層物質の移動に及ぼした影響について考察を試みる。調査対象地は、同丘陵に作られた森林公園内の2つの谷頭部である。両谷頭部とも、谷頭凹地と上部谷壁斜面との境界付近に、炭窯跡などの炭焼き地形が認められる。その分布範囲は広く見積もっても50m2程度であり、谷頭部を構成する谷頭凹地などの自然地形の面積に比べて1桁以上小さい。また自然地形が谷底部から頂部斜面まで20m以上の比高を有するのに対し、炭焼き地形の作る起伏は2m以下である。さらに炭焼き地形を横断する地形断面上で土層断面を観察した結果、炭焼き地形上では腐植(A)層が未発達であるものの、その下方に位置する土層断面には10数cm厚のA層がみられ、その中に顕著な無機物や炭片の混入は確認できなかった。かつて丘陵地で行われていた炭焼きでは、一定程度の地形改変や周辺斜面での樹木伐採といった人為的インパクトがみられたはずであるが、その結果、自然地形としての特徴が大きく損なわれる、土砂流出が活発化するなどの影響はほとんどみられなかったと推定できる。