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[HQR05-04] 房総半島に分布する上総層群最下部層準のテフロクロノロジー
キーワード:上総層群、年代、浪花層、勝浦層、広域テフラ対比、テフラ編年
房総半島に分布する上総層群は,日本の第四系の模式地として最重要層である.多数のテフラ層を挟在し,下部層準の黄和田層までは詳細なテフラ層序・編年研究が進められ,第四紀のテフロクロノロジーに大きく貢献している.また,上総層群は黒滝不整合で下位の三浦層群に重なり,不整合の形成過程についても注目されている.筆者らは,上総層群最下部層準の大原層,浪花層,勝浦層の精査を行い,多くの細粒ガラス質火山灰層を新たに見出した.これら最下部層準の新テフラ層の記載,分析を行い,広域対比を検討した.
房総半島東部の上総層群下部は,黄和田層から下位へ大原層,浪花層,勝浦層,黒滝層に区分されている.黄和田層下部で広域対比されている鍵テフラには,Kd25テフラ(1.65 Ma),Kd38テフラ(1.75 Ma),Kd44テフラ(1.9 Ma)などがあり,大原層の鍵テフラでは,Olduvai subchron中に位置するHSAテフラが古琵琶湖層群の桐生1テフラに,Olduvai subchron下限(1.95 Ma)直下のHSCテフラが神奈川県中津層のYsg5テフラに対比されている.浪花層や勝浦層については,新妻(1976)で報告されているテフラ鍵層(注:新妻(1976)は,近接する様々なテフラを複数まとめ,グループとして上位からSR,KH,KR,SWテフラと記載した.本論で対比を検討したガラス質テフラはそれらのグループの一部と推定される)のうち,浪花層のSR テフラの最下部付近の白色極細粒ガラス質テフラが中央日本を中心とする広域テフラであるOM1(北陸層群大桑層)-OK3テフラ(魚沼層群):(2.15 Ma)に,勝浦層上部のKHテフラの2枚のガラス質テフラのうち下位のガラス質テフラ(KH-L)がOL3(大桑層)-坂東1(東海層群)-西平尾テフラ(掛川層群):2.2 Maにそれぞれ対比されている(田村・山崎,2009;Tamura and Yamazaki,2010).
新たに見出した10層以上の細粒ガラス質テフラについて,鉱物組成や火山ガラスの屈折率,火山ガラスの主成分・微量成分化学組成分析を行い,中央日本の鮮新-更新統で報告されているテフラ層との対比を検討した.その結果,SWテフラよりも下位の層準にあるガラス質テフラ(テフラ採集地である川津集落に因み,上位のテフラをKW2,下位のテフラをKW1と仮に呼ぶ)が,新潟のFup(西山層)-OK2(魚沼層群下部)テフラおよびJwg3 (西山層)-Okr10テフラに対比される可能性が明らかとなった.
KW2は細粒ガラス質テフラで,斑晶鉱物としてopx,cpxを含む.火山ガラスの屈折率(n)は1.500-1.503,化学組成ではFeOが1.49%,CaOが0.88%,K2Oが4.14%,Baが705ppm,Laが35ppm,Srが88ppm,Yが30ppmである.これらの特徴は,新潟地域で連続性よく見出されているFup-OK2テフラと良く一致する.また,KW2の下位にある細粒ガラス質テフラKW1は,斑晶鉱物としてopx, ho, 微量のcpxを含む.火山ガラスの屈折率(n)は1.500-1.502,化学組成ではFeOが1.13%,CaOが1.02%,K2Oが3.68%,Baが621ppm,Laが29ppm,Srが111ppm,Yが20ppmである.これらの特徴は,Jwg3-Okr10テフラ(Tamura et al, 2016)に類似する.Fup-OK2テフラの層位は,SRに対比されているOM1-OK3テフラ(2.15 Ma)の下位,中央日本に分布する広域テフラTn-Tspテフラ(2.3 Ma)の上位である. Jwg3-Okr10テフラは,新潟地域の西山層や千倉層群で,Tn-Tspテフラ相当層の下位にあり2.388 Maという年代が得られている(Tamura et al, 2016).以上から,層位的にも矛盾はなく,これらは対比される可能性が高い.新たな広域テフラとの対比から,房総半島に分布する上総層群最下部層準の堆積年代は, 2.4 Maまで遡ると考えられる.
房総半島東部の上総層群下部は,黄和田層から下位へ大原層,浪花層,勝浦層,黒滝層に区分されている.黄和田層下部で広域対比されている鍵テフラには,Kd25テフラ(1.65 Ma),Kd38テフラ(1.75 Ma),Kd44テフラ(1.9 Ma)などがあり,大原層の鍵テフラでは,Olduvai subchron中に位置するHSAテフラが古琵琶湖層群の桐生1テフラに,Olduvai subchron下限(1.95 Ma)直下のHSCテフラが神奈川県中津層のYsg5テフラに対比されている.浪花層や勝浦層については,新妻(1976)で報告されているテフラ鍵層(注:新妻(1976)は,近接する様々なテフラを複数まとめ,グループとして上位からSR,KH,KR,SWテフラと記載した.本論で対比を検討したガラス質テフラはそれらのグループの一部と推定される)のうち,浪花層のSR テフラの最下部付近の白色極細粒ガラス質テフラが中央日本を中心とする広域テフラであるOM1(北陸層群大桑層)-OK3テフラ(魚沼層群):(2.15 Ma)に,勝浦層上部のKHテフラの2枚のガラス質テフラのうち下位のガラス質テフラ(KH-L)がOL3(大桑層)-坂東1(東海層群)-西平尾テフラ(掛川層群):2.2 Maにそれぞれ対比されている(田村・山崎,2009;Tamura and Yamazaki,2010).
新たに見出した10層以上の細粒ガラス質テフラについて,鉱物組成や火山ガラスの屈折率,火山ガラスの主成分・微量成分化学組成分析を行い,中央日本の鮮新-更新統で報告されているテフラ層との対比を検討した.その結果,SWテフラよりも下位の層準にあるガラス質テフラ(テフラ採集地である川津集落に因み,上位のテフラをKW2,下位のテフラをKW1と仮に呼ぶ)が,新潟のFup(西山層)-OK2(魚沼層群下部)テフラおよびJwg3 (西山層)-Okr10テフラに対比される可能性が明らかとなった.
KW2は細粒ガラス質テフラで,斑晶鉱物としてopx,cpxを含む.火山ガラスの屈折率(n)は1.500-1.503,化学組成ではFeOが1.49%,CaOが0.88%,K2Oが4.14%,Baが705ppm,Laが35ppm,Srが88ppm,Yが30ppmである.これらの特徴は,新潟地域で連続性よく見出されているFup-OK2テフラと良く一致する.また,KW2の下位にある細粒ガラス質テフラKW1は,斑晶鉱物としてopx, ho, 微量のcpxを含む.火山ガラスの屈折率(n)は1.500-1.502,化学組成ではFeOが1.13%,CaOが1.02%,K2Oが3.68%,Baが621ppm,Laが29ppm,Srが111ppm,Yが20ppmである.これらの特徴は,Jwg3-Okr10テフラ(Tamura et al, 2016)に類似する.Fup-OK2テフラの層位は,SRに対比されているOM1-OK3テフラ(2.15 Ma)の下位,中央日本に分布する広域テフラTn-Tspテフラ(2.3 Ma)の上位である. Jwg3-Okr10テフラは,新潟地域の西山層や千倉層群で,Tn-Tspテフラ相当層の下位にあり2.388 Maという年代が得られている(Tamura et al, 2016).以上から,層位的にも矛盾はなく,これらは対比される可能性が高い.新たな広域テフラとの対比から,房総半島に分布する上総層群最下部層準の堆積年代は, 2.4 Maまで遡ると考えられる.