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[HQR05-07] 寒冷地域である北日本の最寒期における世界最古級の土器と石鏃の発明
The world’s OLDest pottery and stone arrowheads appeared in the cOLD est climate in the cOLD area in Japan
キーワード:Sea surface temperatures, Atmospheric temperatures, Climatic change, pottery, stone arrowheads, Jomon people
土器の発明と発展は,考古学研究のみならず一般人にも関心の高いトピックスである.特に,興味深いのは,中東では,農業開始後,数千年を経て土器が出現した.ヨーロッパでは,農業開始と土器が出現はほぼ同時期であった.一方,日本を含めた極東では,土器の出現は農業開始に数千年先行した.日本の場合,縄文時代の開始は,基本的に縄文土器の出現とそれに伴う文化の誕生によってもたらされた.土器の発展は,気候変動やそれに伴う生態学的な変化により促されたようであるが,これまで定量的な環境因子との関連については,ほとんど議論されてこなかった.
アルケノン水温と気温の高相関を利用した新方式を用いて行なった(誤差0.2℃程度).本州最北端の下北半島沖(MD01-2409地点)で,過去2万7千年間の復元された温度(気温,水温)は,最高水温が19.4℃(6,660年前),最低水温が8.7℃(推定気温は5.2℃,15,680年前)であった.この最寒冷期は,最終氷期最盛期でなく,北大西洋の異常に起源をもつ地球的規模での気候異常であるハインリッヒ事変に相当していた.しかも,中国の鍾乳洞の石筍記録より夏期アジアモンス-ンが弱体化していた時期であった.最寒期の温度を現在の水温(~15.7℃),気温(~16.7℃)と比べると約7~11℃低かった.
このことは,世界で最古級の土器と石鏃は,ホモ・サピエンスが日本列島に居住して以来,日本列島の寒冷地域で,しかも縄文人が経験した中で最寒期に出現したことを意味している.この夏期の気候は,現在の北海道東部の根室や納沙布岬の現在それより若干寒いことを示していた.このため,食料は,豊富な魚介類に頼ることとなり,最初期の縄文人は,縄文土器を用いて,海洋や河川水の水産資源を調理し,「海鮮鍋」を楽しんでいた.この結果は,近年発表された,土器付着有機物の精密化学分析の結果と整合的である.
引用文献:Kawahata, H., Ishizaki, Y., Kuroyanagi, A., Suzuki, A., Ohkushi, K. (2017) Quantitative reconstruction of temperature at Jomon site in the Incipient Jomon period in northern Japan and its implication for the production of early pottery and stone arrowheads. Quaternary Science Reviews, 157, 66-79.
アルケノン水温と気温の高相関を利用した新方式を用いて行なった(誤差0.2℃程度).本州最北端の下北半島沖(MD01-2409地点)で,過去2万7千年間の復元された温度(気温,水温)は,最高水温が19.4℃(6,660年前),最低水温が8.7℃(推定気温は5.2℃,15,680年前)であった.この最寒冷期は,最終氷期最盛期でなく,北大西洋の異常に起源をもつ地球的規模での気候異常であるハインリッヒ事変に相当していた.しかも,中国の鍾乳洞の石筍記録より夏期アジアモンス-ンが弱体化していた時期であった.最寒期の温度を現在の水温(~15.7℃),気温(~16.7℃)と比べると約7~11℃低かった.
このことは,世界で最古級の土器と石鏃は,ホモ・サピエンスが日本列島に居住して以来,日本列島の寒冷地域で,しかも縄文人が経験した中で最寒期に出現したことを意味している.この夏期の気候は,現在の北海道東部の根室や納沙布岬の現在それより若干寒いことを示していた.このため,食料は,豊富な魚介類に頼ることとなり,最初期の縄文人は,縄文土器を用いて,海洋や河川水の水産資源を調理し,「海鮮鍋」を楽しんでいた.この結果は,近年発表された,土器付着有機物の精密化学分析の結果と整合的である.
引用文献:Kawahata, H., Ishizaki, Y., Kuroyanagi, A., Suzuki, A., Ohkushi, K. (2017) Quantitative reconstruction of temperature at Jomon site in the Incipient Jomon period in northern Japan and its implication for the production of early pottery and stone arrowheads. Quaternary Science Reviews, 157, 66-79.