JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] [JJ] ヒト-環境系の時系列ダイナミクス

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 106 (国際会議場 1F)

コンビーナ:須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、水野 清秀(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)、米田 穣(東京大学総合研究博物館)、座長:米田 穣(The University Museum, The University of Tokyo)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)

12:00 〜 12:15

[HQR05-12] 東京湾岸埋立地北部における2011年東北地方太平洋沖地震時の液状化-流動化の分布と沖積層の分布との関係

*風岡 修1宇澤 政晃2檜山 知代2荻津 達1八武崎 寿史1香川 淳1吉田 剛1加藤 晶子1小倉 孝之1 (1.千葉県環境研究センター地質環境研究室、2.関東建設株式会社)

キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震、液状化-流動化、東京湾岸埋立地、人工地層、沖積層

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(Mj.9.0)(以下「太平洋沖地震」と略す)とその余震の際,東京湾岸埋立地北部では広範囲に液状化-流動化現象が発生し,局所的に0.3mを超える著しい地表面の沈下が発生した(千葉県環境研究センター地質環境研究室,2011).この現象は,沖積層の厚い地域に集中する傾向がみられる(風岡,2011;千葉県環境研究センター地質環境研究室,2011).今回の調査は上記の原因解明のため,地表より沖積層までの地層構成・透水層構造および液状化-流動化が発生した層準の把握と弾性波速度を求め,地震動の増幅を検討することを目的としている.このため,液状化-流動化がみられた市川市行徳と船橋市日の出において下総層群に達するオールコアボーリングを行い透水層構造や岩相層序を把握し,せん断波速度構造を調べ,千葉市美浜区稲毛海岸の本研究室敷地の下総層群内に設置された地中地震計により得られた太平洋沖地震の地震波形記録(以下「稲毛波」と略す)を基に,今回得られた地層物性値や既存データ(中澤ほか,2014;宮地ほか,2014;千葉県総務部消防地震防災課,2005など)から,沖積谷の内部(今回の調査地点)と外の地質モデルを作成し,SHAKE(㈱構造計画研究所製の「K-SHAKE」)により地震動シミュレーションを行い,沖積谷の内外の揺れを比較した.
市川市行徳:行徳高校やこの南東の小・中学校のグランドにて多量の噴砂が見られた.オールコアボーリング地点は,行徳高校のグランドの北東隅で,地震時には砂混じりの地下水が多量に噴出し沈下が生じた部分である.調査地点の標高は3.3m,人自不整合は深度5.53m,沖積層の基底深度は41.70mである.
人工地層は深度0.9m以浅の盛土アソシエーションと,これ以深の埋立アソシエーションから構成される.埋立アソシエーションは,極軟らかい細粒シルト層と極ゆるい~ややゆるい極細粒砂~細粒砂層との泥勝ち互層からなる.厚さ10cm未満の砂層は液状化していない.厚さ24cm以上の砂層は液状化-流動化しているが,貝殻片や砂鉄のラミナがみられる部分は流動化はあまり起こっておらずラミナがぼやけている.
沖積層は,下位より厚さ0.1mで淘汰の悪い締まった泥まじり細礫質中粒砂層からなる最下部層,厚さ約10.3mで軟らかな細粒シルト層からなる下部層,厚さ約5.5mでローム礫混じりの締まった極細粒砂~中粒砂層からなる中下部層,厚さ約12.2mで貝化石を多く含む軟らかい細粒シルト層からなる中上部,厚さ約5.9mでローム礫混じりのやや締まった極細粒砂~中粒砂層からなる上部層,厚さ約2.1mで生物擾乱が著しいやや締まった粗粒シルト~極細粒砂層である最上部層から構成され,いずれの層準も液状化-流動化はみられない.
S波速度は,下総層群が315m/s,沖積層の下部層・最下部層が175m/s,中下部層が195m/s,中上部層が135m/s,上部層が190m/s,最上部層が280m/s,人工地層が120m/sであり,K-SHAKEによって稲毛波を沖積層の基底付近から入射した結果,沖積谷内のボーリング地点では6弱のゆれ,谷の外(人工地層・沖積層の厚さがそれぞれ6m)では5強となり,沖積谷の外でも揺れが強く液状化-流動化現象がみられた.
船橋市日の出:船橋市日の出付近では,船橋市立湊中学校のグランドにおいて液状化-流動化現象が発生し,大規模な噴砂や局所的沈下が生じた.また,周囲の戸建住宅の一部でも小規模な噴砂や局所沈下がみられた.オールコアボーリング地点は,湊中学校のグランドの北東隅の,地震時に多量の噴砂がありやや沈下が生じた部分である.調査地点の標高は1.8m,人自不整合は3.48m,沖積層の基底深度は36.29mである.
人工地層は深度0.5m以浅の盛土アソシエーションと,これ以深の埋立アソシエーションから構成される.埋立アソシエーションは,ゆるい~ややゆるい極細粒砂~細粒砂層中に極軟らかい細粒シルト層を挟む.砂層のみの部分は液状化-流動化しているが,貝殻片のラミナが発達する層準は流動化はほとんど起きていない.
沖積層は,厚さ約5.2mで植物片を含み締まった細粒砂~中粒砂層を主体とする最下部層,厚さ約4.9mで植物片を多く含む軟らかな細粒シルト層主体の下部層,厚さ約10.7mで生痕が発達し軟らかな細粒~中粒シルト層とローム礫混じりのやや締まった極細粒砂~細粒砂層との互層からなる中下部層,厚さ約6.4mでやや締まった細粒砂~中粒砂層を主体とする中上部層,厚さ約2mで軟らかな細粒シルト層を主体とする上部層,厚さ約3.6mで中粒シルト層を主体とし最上部はやや締まった極細粒砂となる最上部層からなる.
S波速度は,下総層群が430m/s,沖積層の最下部~中下部が150m/s,中上部が230m/s,上部層・最上部層が90m/s,人工地層が120m/sであり,K-SHAKEによって稲毛波を沖積層の基底付近から入射した結果,沖積谷内のボーリング地点では5強のゆれ,谷の外(人工地層・沖積層の厚さがそれぞれ4mと6m)では5弱となり,沖積谷の外では揺れが小さく液状化-流動化現象がほとんどみられていない.
なお,本調査を進めるにあたり,千葉県立行徳高校と船橋市立湊中学校の方々,千葉県環境研究センターの方々にはさまざまな便宜をいただいたことに感謝いたします.