JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] [EJ] 人間環境と災害リスク

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)

[HSC07-P03] 機械学習を使った2014年広島豪雨災害による表層崩壊発生場における 地形量の検討

*松本 一希須貝 俊彦1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

キーワード:2014年広島土砂災害、表層崩壊、機械学習

1.はじめに
表層崩壊の発生場所を予測する方法は「経験的手法」 「決定論的手法(千木良,2006)」「統計的手法」の3種に分けられる.近年,航空レーザー測量技術とリモートセンシング技術の発展,コンピューター性能の向上,機械学習技術の開発により,統計的手法の研究が国内外で進められている.本研究では,2014年8月20日の広島豪雨災害時に発生した表層崩壊を例に,ランダムフォレスト法(以下RF法)という新しい機械学習法(Breiman,2001)を利用して,表層崩壊が発生しやすい場所がどのような地形量によって特徴づけられるのかを検討した.ちなみにRF法は,大量の決定木を生成して,分類を行う機械学習法である

2.地域概要と方法
研究対象地域は,広島県広島市安佐北区・安佐南区に広がる高松山と阿武山である.本研究では崩壊数の少ない結晶片岩地域をのぞき,花崗岩地域を対象とした.解析には,国土地理院発行の5mメッシュ数値標高モデル(以下DEM)を利用した.このDEMは2008 年に作成されたので,2014年に発生した崩壊よりも前の地形量を考察できる.2014年の斜面崩壊範囲は,国土地理院に準拠した.地形量の算出はGRASS GIS 7.0.1上で行い,傾斜・累積流量・地形湿潤度・断面曲率・平面曲率を計算した.統計解析とRF法はR言語3.2.3上で実行した.
解析対象の地形の空間スケールを「崩壊地源頭部」「1次流域」「大集水域」の3つの階層に分けた.「崩壊地源頭部」を,各崩壊地の最高標高点を含むセルで代表させた.「崩壊地源頭部」の解析にあたっては,崩壊地源頭部を通る落水線を設定し,落水線の地形特性をも考慮した.崩壊地源頭部と,それに隣接する尾根側と谷側の2セルを合わせた5セルの範囲(落水線の一部をなす)を崩壊地源頭部近傍とよぶ.水系図を発生させ、「1次流域」を認定した.各谷口における土砂災害の被災リスクを見積もることは防災上の意義が高いことから,山麓に下流端(谷口)が達する流域を「大集水域」として,認定した.大集水域には1~6次流域が含まれる.
3.結果・考察
崩壊地源頭部は,①尾根から125 m以内の②最大傾斜地点付近に位置することが多く,傾斜が32度~39度の斜面に集中することが分かった.RF法により,崩壊地源頭部近傍では上部から下部にかけて,断面曲率が凹型から等斉型に変化し,かつ平面曲率が直線型・尾根型から谷型に変化する場合に,表層崩壊が発生したケースが多かった.
1次流域のRFモデルは,他の2種の空間スケールのモデルと比較して誤判定率が最も高く,崩壊発生流域と非発生流域の間での地形的差異は最も少ないと考えられる.その中でも,流域内最低標高が143 m以上の場合,崩壊が発生しやすいと分類された.この条件を満たす1次流域は上流端が主尾根に達しているという特徴を示した.
大集水域では,崩壊した集水域の特徴として,地形湿潤度や累積流量の最大値(通常は集水域の下流端の値)が高いことが明らかになった.長時間湿潤な条件に置かれやすい集水域ほど崩壊が発生しやすかったと考えられる.このことは,降水量が多い時ほど,面積が大きい流域ほど,流域内で崩壊が発生しやすいことを示唆しており,当然予測されることではあるが,各谷口から山麓堆積域に土石流が及ぶ頻度と強く関係すると考えられることから,防災上重要である
今回対象とした崩壊は,対象地域の中でも花崗岩地域で発生したものに限った.表層崩壊発生地の地形量は地質ごとに変化するものと思われるので,今後は様々な地質地域で同様の検討を行う必要がある.また同じ花崗岩地域でも,地域や崩壊の規模により,地形量に変化が見られる可能性もあるため,別地域の事例を重ねる必要がある.

引用文献
Breiman L(2001):Random forests. Machine learning, 45:5-32.
千木良雅弘(2006):地すべり・崩壊の発生場所予測―地質と地形から見た技術の現状と今後の展開―. 土木学会論文集C, 62(4):722-735.