16:15 〜 16:30
[HSC08-10] 接触角変化による遮蔽性への影響に関する数値解析
キーワード:二酸化炭素地中貯留、接触角、毛管圧、数値解析
CO2地中貯留において、我が国の一般的な帯水層の貯留サイトでは反応鉱物が多い地層特性がしばしば見られる。このような地層では、CO2の溶解によりpHの低下した間隙水が岩石表面で地化学反応を起こすと、岩石表面に鉱物膜が形成され、岩石の濡れ性(接触角)ひいては毛管圧が変化し、遮蔽性に影響する可能性がある。本研究では、地中貯留における接触角の変化がシール層の遮蔽性にどのような影響を及ぼすかを数値シミュレーションにより検討した。
シミュレーションでは海底下貯留を想定し、水平方向に20 km、鉛直方向に0.5 kmの放射流モデルを用いた。上端を水深200 m海底下の深度700 mとし、温度31 oC、圧力9.0 MPaの条件を設定した。深度1,000 mを中心に100 m厚ないし200 m厚の貯留層が存在し、その直上に100 m厚のシール層が存在する。貯留層の下部は基盤岩、シール層の上部は二次帯水層としている。CO2は貯留層に年間100万トンのレートで50年間圧入されるものとした。シミュレーションは圧入期間の50年間及びその後450年間におけるCO2プルームの広がりや地層水への溶解量等に関して行った。計算には、汎用貯留層シミュレータSTARと状態方程式SQSCO2を用いている。
貯留層の浸透率は鉛直・水平方向に10/100 mD、シール層は0.1/1 mDとした。水およびCO2の相対浸透率の関数は全層共通とし、それぞれvan Genuchten型及びCorey型で表されるものとした。不動水飽和度は0.2、残留CO2飽和度は0.05とし、ヒステリシスが生じるものとしている。毛管圧はvan Genuchten型とし、残留CO2飽和度における毛管圧をスレッショルド圧Pthとみなした。スレッショルド圧は貯留層を0.1 MPa、遮蔽層を0.5 MPaないし1.0 MPaとした。本研究では、初期の水‐CO2‐地層の接触角は0°の水濡れとし、ある時点で地化学反応による接触角の変化が発生することを仮定、これを15°刻みで75°まで振るケーススタディを行った。接触角θの変化によりラプラスの式Pth = 4σcosθ/dにしたがってスレッショルド圧が変化するものとしている。ここで、界面張力σおよびスロート径dは不変とした。接触角変化による毛管圧変化(すべてのCO2飽和度でcosθに比例)のタイミングについては、変化なし、圧入開始から25年後、50年後、100年後の各ケーススタディを行った。
シミュレーションの結果として1)接触角が変化しないケースでは圧入中に遮蔽層へ若干のCO2進入が見られるが、圧入停止後はほぼ停止する。2)いずれのケースでも圧入停止から450年後時点でCO2は貯留層および遮蔽層内に留まり、二次帯水層への進入は起こらなかった。これは遮蔽層の浸透率が十分小さいため,また残留ガストラップが働いたためと考えられる。3)接触角の変化により毛管圧が低下すると、圧入停止後も遮蔽層へのCO2進入が続くケースがあった。4)特に、初期スレッショルド圧が低く、貯留層厚の厚い浮力が大きいケースでは効果が顕著であった。以上の結果から、地化学反応による接触角の変化が、長期的な遮蔽性に影響を及ぼす可能性が示唆された。
本研究は、経済産業省からの委託研究「二酸化炭素大規模地中貯留の安全管理技術開発事業」の一部として実施した。
シミュレーションでは海底下貯留を想定し、水平方向に20 km、鉛直方向に0.5 kmの放射流モデルを用いた。上端を水深200 m海底下の深度700 mとし、温度31 oC、圧力9.0 MPaの条件を設定した。深度1,000 mを中心に100 m厚ないし200 m厚の貯留層が存在し、その直上に100 m厚のシール層が存在する。貯留層の下部は基盤岩、シール層の上部は二次帯水層としている。CO2は貯留層に年間100万トンのレートで50年間圧入されるものとした。シミュレーションは圧入期間の50年間及びその後450年間におけるCO2プルームの広がりや地層水への溶解量等に関して行った。計算には、汎用貯留層シミュレータSTARと状態方程式SQSCO2を用いている。
貯留層の浸透率は鉛直・水平方向に10/100 mD、シール層は0.1/1 mDとした。水およびCO2の相対浸透率の関数は全層共通とし、それぞれvan Genuchten型及びCorey型で表されるものとした。不動水飽和度は0.2、残留CO2飽和度は0.05とし、ヒステリシスが生じるものとしている。毛管圧はvan Genuchten型とし、残留CO2飽和度における毛管圧をスレッショルド圧Pthとみなした。スレッショルド圧は貯留層を0.1 MPa、遮蔽層を0.5 MPaないし1.0 MPaとした。本研究では、初期の水‐CO2‐地層の接触角は0°の水濡れとし、ある時点で地化学反応による接触角の変化が発生することを仮定、これを15°刻みで75°まで振るケーススタディを行った。接触角θの変化によりラプラスの式Pth = 4σcosθ/dにしたがってスレッショルド圧が変化するものとしている。ここで、界面張力σおよびスロート径dは不変とした。接触角変化による毛管圧変化(すべてのCO2飽和度でcosθに比例)のタイミングについては、変化なし、圧入開始から25年後、50年後、100年後の各ケーススタディを行った。
シミュレーションの結果として1)接触角が変化しないケースでは圧入中に遮蔽層へ若干のCO2進入が見られるが、圧入停止後はほぼ停止する。2)いずれのケースでも圧入停止から450年後時点でCO2は貯留層および遮蔽層内に留まり、二次帯水層への進入は起こらなかった。これは遮蔽層の浸透率が十分小さいため,また残留ガストラップが働いたためと考えられる。3)接触角の変化により毛管圧が低下すると、圧入停止後も遮蔽層へのCO2進入が続くケースがあった。4)特に、初期スレッショルド圧が低く、貯留層厚の厚い浮力が大きいケースでは効果が顕著であった。以上の結果から、地化学反応による接触角の変化が、長期的な遮蔽性に影響を及ぼす可能性が示唆された。
本研究は、経済産業省からの委託研究「二酸化炭素大規模地中貯留の安全管理技術開発事業」の一部として実施した。