[HSC08-P03] 地化学反応が遮蔽性能に及ぼす影響に関する予備的検討
キーワード:CO2地中貯留、遮蔽性能、地化学反応、炭酸塩鉱物、キャップロック、スレッショルド圧
CO2地中貯留では、CO2が地表に漏洩することなく安定に隔離され続けることが前提となる。このような地下のシール性能を決める因子が、キャップロックの浸透率と毛管圧(スレッショルド圧)である。これまで貯留サイトの岩石に対する浸透実験からこれらのパラメータの計測が行われてきたが、CO2が溶解した間隙水中で長期にわたる地化学プロセスを経た後も、同様のシール性能が保証されるかどうかは確認されていなかった。本研究では、キャップロックのシール性能および貯留層の圧入性の両方の観点から、岩石が反応する際の水理特性の変化を定量的に評価した。
日本各地の露頭から採取された堆積岩のうち、3種類の泥岩(浪花層、大原層および一志層群泥岩)、五日町層群泥灰岩、および2種類の砂岩(灰爪層石灰質貝屑砂岩および大泊有孔虫砂岩)を選定した。偏光顕微鏡によるモード測定および粉末X線解析からは、一志層群泥岩以外の全ての岩石が炭酸塩鉱物を含んでいることが示された。特に泥灰岩石と2つの砂岩で、炭酸塩鉱物の含量が多くなっていた。
初めに、超臨界CO2-水反応システムにより、閉鎖系での反応実験を行った。反応に先立ち、岩石を直径14 mm、高さ10 mmの円筒状に成形した。個々の岩石に対して4個の試料を用意し、異なる時間別々に反応させた。反応時間は、1週間、2週間および4週間とした。実験中はオーブン内を40℃に保持し、超臨界CO2で10 MPaに加圧維持した。次に、反応後の試料に対して、超臨界CO2シール圧測定システムを用いて浸透実験を行った。室温、大気圧下での浸透率測定に引き続き、10 MPa、40℃の条件下で段階昇圧法によりスレッショルド圧を測定した。
今回の実験により、水理特性に及ぼす地化学反応の影響が岩石種によって全く異なることが確認された。すなわち、浪花層泥岩、大原層泥岩および灰爪層石灰質貝屑砂岩は4週間の反応でほとんど変化がみられなかったが、その他の岩石では、反応時間の経過と共に、浸透率が増加し、スレッショルド圧が減少した。実際には、一志層泥岩と五日町層群泥灰岩では反応後にクラックが形成していたため、これらの岩石の水理学的変化は地化学反応に起因したものではない。一方で、大泊有孔虫砂岩では、比較的多量に含まれる炭酸塩鉱物がCO2溶解水中で溶解した結果、シール性能が低下したと考えられる。ここでは、同じ石灰質の灰爪層石灰質貝屑砂岩では水理特性が変化しなかった点が注目される。この理由として、灰爪層石灰質貝屑砂岩では炭酸塩が流路と接していなかったため、炭酸塩とCO2溶解水の反応が進行しなかったことが予想される。発表では、溶出した化学成分と細孔径分布の変化データも併せた形で、地化学反応と水理特性の関係を議論する予定である。
日本各地の露頭から採取された堆積岩のうち、3種類の泥岩(浪花層、大原層および一志層群泥岩)、五日町層群泥灰岩、および2種類の砂岩(灰爪層石灰質貝屑砂岩および大泊有孔虫砂岩)を選定した。偏光顕微鏡によるモード測定および粉末X線解析からは、一志層群泥岩以外の全ての岩石が炭酸塩鉱物を含んでいることが示された。特に泥灰岩石と2つの砂岩で、炭酸塩鉱物の含量が多くなっていた。
初めに、超臨界CO2-水反応システムにより、閉鎖系での反応実験を行った。反応に先立ち、岩石を直径14 mm、高さ10 mmの円筒状に成形した。個々の岩石に対して4個の試料を用意し、異なる時間別々に反応させた。反応時間は、1週間、2週間および4週間とした。実験中はオーブン内を40℃に保持し、超臨界CO2で10 MPaに加圧維持した。次に、反応後の試料に対して、超臨界CO2シール圧測定システムを用いて浸透実験を行った。室温、大気圧下での浸透率測定に引き続き、10 MPa、40℃の条件下で段階昇圧法によりスレッショルド圧を測定した。
今回の実験により、水理特性に及ぼす地化学反応の影響が岩石種によって全く異なることが確認された。すなわち、浪花層泥岩、大原層泥岩および灰爪層石灰質貝屑砂岩は4週間の反応でほとんど変化がみられなかったが、その他の岩石では、反応時間の経過と共に、浸透率が増加し、スレッショルド圧が減少した。実際には、一志層泥岩と五日町層群泥灰岩では反応後にクラックが形成していたため、これらの岩石の水理学的変化は地化学反応に起因したものではない。一方で、大泊有孔虫砂岩では、比較的多量に含まれる炭酸塩鉱物がCO2溶解水中で溶解した結果、シール性能が低下したと考えられる。ここでは、同じ石灰質の灰爪層石灰質貝屑砂岩では水理特性が変化しなかった点が注目される。この理由として、灰爪層石灰質貝屑砂岩では炭酸塩が流路と接していなかったため、炭酸塩とCO2溶解水の反応が進行しなかったことが予想される。発表では、溶出した化学成分と細孔径分布の変化データも併せた形で、地化学反応と水理特性の関係を議論する予定である。