JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] [EE] GEOSCIENTIFIC APPLICATIONS OF HIGH-DEFINITION TOPOGRAPHY AND GEOPHYSICAL MEASUREMENTS

2017年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 103 (国際会議場 1F)

コンビーナ:早川 裕弌(東京大学空間情報科学研究センター)、佐藤 浩(日本大学文理学部)、楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、内山 庄一郎(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:早川 裕弌(東京大学空間情報科学研究センター)、座長:佐藤 浩(日本大学文理学部)、座長:内山 庄一郎(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))

14:05 〜 14:25

[HTT19-02] UAV-SfMを用いた東南極宗谷海岸基盤岩風化状態の定量的解析

★招待講演

*川又 基人1菅沼 悠介2,1土井 浩一郎2,1 (1.総合研究大学院大学 極域科学専攻、2.国立極地研究所)

キーワード:UAV-SfM, Rock Weathering

南極氷床の過去の変動記録は、今後劇的に変化するかもしれない東南極氷床融解の将来予測のためにも重要である。東南極宗谷海岸南部では宇宙線生成核種を用いた表面露出年代測定法に基づく氷床後退年代が示されているが、地形学的な記載に乏しく、氷床の最大拡大期や後退のスピードといった時空間的な氷床変動の復元に至っていない。従って、スポット的な氷床後退年代と共に、基盤の風化状態などの地形学的特徴から氷床変動の同時間面を推定し、より詳細かつ広範囲な氷床変動を復元することが重要である。そこで本研究では、宗谷海岸北部 (West Ongul島) と南部 (Telen) において、Unmanned aerial vehicle (UAV) による空撮とStructure from Motion (SfM) 技術により取得した数値標高モデル (DEM) を用いて,基盤岩の風化状態の評価を試みた。また、空撮地域内において岩質がほぼ同等だと確認された地点で表層の岩石を採取し、エコーチップ硬さ試験機を用いて深さ方向(表層から5 cmまで)の岩石の反発強度を調べた。これらの現地調査は、第57次南極地域観測隊 (2015年12月から2016年2月) の一環として実施した。
West Ongul島とTelenのUAV-SfM解析領域内における地形的特徴を抽出するため、全体の傾斜を補正後のDEMに対して周波数解析を行い、5.0 m、1.0 m、0.2 mのハイパスフィルターを掛けることにより各周波数成分の抽出を行った。その結果、低周波成分(5.0 mハイパス)は主に地質構造に起因する起伏を反映するのに対し、高周波成分(0.2 mハイパス)はTelenにおいてやや卓越し,とくに地形の急傾斜に対応することが分かった。また、約5 cmメッシュにおける傾斜のヒストグラムからも、Telenには40˚以上の傾斜をもつ区画が多いことが明らかになった。このことは、Telenにおける高周波成分の卓越が、地形の遷急線にあたる地形の角が保存されていることを示している可能性がある。一方、West Ongul島では風化の影響で地形的に角張った部分が削剥されてしまったと考えられる。また、両地域のエコーチップによる反発強度(L値)を比較するとTelenのL値はWest Ongul島と比較して約1.2倍大きかった。さらに両地域とも深度が増すにつれ、L値が大きくなる傾向がある。このことは、West Ongul島の表層で物理的強度が減少していることを示しており、表層の風化による影響を強く示唆する。つまり反発強度の結果はUAV-SfMで得られた地形の特徴と整合的な結果といえる。以上のことから、今回得られた宗谷海岸北部と南部の地形情報の違いは氷床後退時期の違いに起因しており、West Ongul島がTelenに比べてより強く風化の影響を受けていることを示していると考えられる。しかし、今回の解析では地形の起伏には岩質の違いや地層の傾き、氷河底での環境など様々な要因をまだ充分に検討出来ておらず、今後の研究課題である。