JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT23] [JJ] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)

[HTT23-P03] 濃尾平野における降水同位体の南北分布

山田 浩加1、*森本 真紀1勝田 長貴1 (1.岐阜大学教育学部)

キーワード:降水、酸素同位体比、水素同位体比、南北分布、濃尾平野

濃尾平野における降水の南北分布の特徴を調べるため、伊勢湾岸から内陸の岐阜市にかけての木曽三川に沿う6地点(岐阜県の岐阜・羽島、愛知県の尾西・山崎・愛西・飛島)において、降水の週単位の採水をおこなった。2016年8月から2016年12月にかけて採水し、降水量の計測と酸素・水素同位体測定をおこなった。採水には、貯水型雨量計である自作の簡易雨量計を用いた。口径18cmの漏斗と2Lペットボトルを組み合わせた雨量計について観測精度を調べ、降水量に対して平均±0.5%の結果が得られた。これは、転倒ます型雨量計の気象庁検定基準よりも高精度であり、十分に実用的な精度を持っていることが示された。さらに、蒸発防止装置の有無が採水量に与える影響ついても検討し、本研究の定点観測ではピンポン球を用いた。
 濃尾平野内の南北測線における週単位の降水の定点連続観測結果から、観測期間中は9月中旬に降水量が最も多く、全期間の総降水量については内陸部の方が多く、沿岸部で比較的少なかった。降水量と同位体比の南北分布の特徴から、週毎の観測値を4つのタイプに分類し、気象状況と降水量・降水同位体比との関係を考察した。8月から12月にかけての酸素・水素同位体比の季節変化では、10月を境に同位体比が上昇した。d-excess値(d = δD − 8δ18O)ではさらに明瞭な変化を示し、観測した6地点全てにおいて、10月10日以降の週でそれ以前よりも10‰以上高い値を示した。同位体比変化の特徴から期間I(8月24日〜10月9日)と期間II (10月10日〜12月12日)に分け、δ-ダイアグラムを比較すると回帰線の切片が大きく異なっていた。Craig (1961) の世界の天水線と期間IIの回帰式はほぼ一致しており、日本の平均的な天水線は期間Iと期間IIの中間であった。
 さらに、観測期間中の2016年9月20日に濃尾平野に接近した台風16号に伴う降雨を、岐阜大学構内で30分毎に採水した。降水が観測された13時間において、降水量のピークは2回あり、酸素・水素同位体比は共に台風通過前後で大きく低下し、さらに、d-excess値は台風の通過後に大きく減少した。これらの変化から台風の消滅時期の降水の特徴について考察した。