[HTT23-P04] 首都圏近郊山間部森林域における渓流水の化学特性と大気沈着の影響評価(3)
キーワード:安定同位体、窒素飽和、硝酸態窒素、アンモニア態窒素、溶存有機態窒素、硝化
神奈川県西部に位置する丹沢地域では、大気汚染物質によるモミ林の立ち枯れや土壌の酸性化が報告されている。私達は、渓流水を通じて高濃度の硝酸イオンが流出していることを報告してきた。
ここでは、2007年から2015年までの9 年間の無機態・有機態窒素成分の流出挙動を報告するとともに、水の水素・酸素安定同位体比から大気沈着の影響評価を行った結果を報告する。東丹沢の渓流を北部、南東部、南西部に分けて、それぞれの平均全窒素濃度とその窒素成分比(硝酸態窒素、アンモニア態窒素、有機態窒素)の経年変化を調べた。全窒素濃度は南東部(9年間平均:1.12 mgN/L) >南西部(0.99 mgN/L)>北部(0.67 mgN/L)であり、3地域ともに減少傾向にあった。2015年は3地域とも特に減少しており、2007年との濃度比は北部、南東部、南西部でそれぞれ0.60、0.62、0.69 であり、北部での濃度減少が顕著であった。2009年以降、3地域ともに硝酸態窒素の割合が減少し、有機態窒素の割合が増加しており,特に北部で増加割合が高かった。一方、アンモニア態窒素に明確な傾向は見られなかった。渓流水中硝酸態窒素濃度は明確に減少したが、この原因として国内大気汚染による大気沈着量の減少、表層土壌における硝化による硝酸生成量の減少が考えられる。
東丹沢における渓流水の水素・酸素安定同位体比の標高依存性を示すが、標高が高くなるにつれて同位体比は低下した。このような傾向は日本国内の地表水でも報告されており、一般に地表水の流下とともに軽い水が蒸発する蒸発効果によるものである。林内雨と林外雨の安定同位体比も示しているが、林内雨が林外雨よりも高く、渓流水は両者の間に分布していることが分かった。低地森林では樹冠遮断のために林内雨量は林外雨量の70%程度であり、樹冠での蒸発のため同位体分別が起こり、林内雨で重くなる傾向にある。丹沢大山では霧が頻繁に発生することから林内雨量は林外雨量の 1.8 倍であり、安定同位体比の違いは霧水沈着によるものと考えられる。
ここでは、2007年から2015年までの9 年間の無機態・有機態窒素成分の流出挙動を報告するとともに、水の水素・酸素安定同位体比から大気沈着の影響評価を行った結果を報告する。東丹沢の渓流を北部、南東部、南西部に分けて、それぞれの平均全窒素濃度とその窒素成分比(硝酸態窒素、アンモニア態窒素、有機態窒素)の経年変化を調べた。全窒素濃度は南東部(9年間平均:1.12 mgN/L) >南西部(0.99 mgN/L)>北部(0.67 mgN/L)であり、3地域ともに減少傾向にあった。2015年は3地域とも特に減少しており、2007年との濃度比は北部、南東部、南西部でそれぞれ0.60、0.62、0.69 であり、北部での濃度減少が顕著であった。2009年以降、3地域ともに硝酸態窒素の割合が減少し、有機態窒素の割合が増加しており,特に北部で増加割合が高かった。一方、アンモニア態窒素に明確な傾向は見られなかった。渓流水中硝酸態窒素濃度は明確に減少したが、この原因として国内大気汚染による大気沈着量の減少、表層土壌における硝化による硝酸生成量の減少が考えられる。
東丹沢における渓流水の水素・酸素安定同位体比の標高依存性を示すが、標高が高くなるにつれて同位体比は低下した。このような傾向は日本国内の地表水でも報告されており、一般に地表水の流下とともに軽い水が蒸発する蒸発効果によるものである。林内雨と林外雨の安定同位体比も示しているが、林内雨が林外雨よりも高く、渓流水は両者の間に分布していることが分かった。低地森林では樹冠遮断のために林内雨量は林外雨量の70%程度であり、樹冠での蒸発のため同位体分別が起こり、林内雨で重くなる傾向にある。丹沢大山では霧が頻繁に発生することから林内雨量は林外雨量の 1.8 倍であり、安定同位体比の違いは霧水沈着によるものと考えられる。