JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT23] [JJ] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)

[HTT23-P13] 乾燥条件下における中低木街路樹の光合成機能・水分状態の比較

*堀家 広樹1半場 祐子1 (1.京都工芸繊維大学)

街路樹は景観の向上、CO2吸収効果や蒸散による冷却効果が期待されている。
しかし、都市部の植物は、夏の間、高温や乾燥ストレスにさらされる環境で生育することを強いられている。特に乾燥ストレスは気孔を閉鎖させる要因となるため、光合成速度の減少を引き起こし、街路樹を設ける意義の一つであるCO2吸収や蒸散による冷却効果にも影響し、温暖化の軽減に寄与するといった望ましい効果が得られない可能性がある。また、植物の乾燥ストレスに対する応答は植物種によって異なることが知られている。本研究では、我が国の中低木街路樹で最も本数の多いヒラドツツジとその他代表的な中低木4種の乾燥ストレス下での光合成機能や炭素安定同位体比を測定し、乾燥耐性、またストレスからの回復を比較した。
 実験に使用した植物(ヒラドツツジ、レンギョウ、クルメツツジ、マルバシャリンバイ、カンツバキ)は各樹種4個体ずつ苗木を用意し学内の温室で栽培した。潅水を停止することにより乾燥ストレスを与え、数日おきに、十分に展開した葉を1個体あたり1枚選び携帯型光合成蒸散測定装置Li-6400(LI-COR社)を用いて光合成速度、蒸散速度、気孔コンダクタンスを測定した。土壌に水分がなくなったとき以降、毎日潅水した。乾燥前(コントロール)、乾燥後(乾燥前の気孔コンダクタンスの20%~30%の値のとき)、回復(再潅水後ポット重量の増加が3日間止まったとき)の各段階でLi-6400を用いてA-Ciカーブ、プレッシャーチャンバーを用いて茎の水ポテンシャルを測定した。炭素安定同位体比測定に使用する葉は各段階で1個体につき1枚ずつ採取した。
 実験の結果、すべての樹種で乾燥ストレス下では光合成速度や水ポテンシャルが有意に減少し、再灌水後は乾燥ストレスをかける前と有意な差がなくなるまで値が回復した。乾燥後段階での乾燥前の値からの光合成速度の減少率はクルメツツジの84%が最大で、レンギョウの55%が最少だった。また乾燥ストレスからの回復率は乾燥前の値の67%まで回復したクルメツツジが最少で、99%まで回復したカンツバキが最大だった。乾燥前から乾燥後への水ポテンシャルの変化はヒラドツツジで−2.4 MPaから−11.6 MPaへの変化が最少、クルメツツジで−1.3 MPaから−17.9MPaへの変化が最大だった。乾燥前の値と比べての水ポテンシャルの回復具合はクルメツツジの−3.9 MPa(乾燥前は−1.3)が最少、ヒラドツツジの−2.2 MPa(乾燥前は−2.4)が最大だった。これらの結果から乾燥ストレス条件下で高い光合成速度を維持できるのはレンギョウ、乾燥からの光合成速度の回復力が高いのはカンツバキ、植物体水分状態の維持力は乾燥中と回復両方でヒラドツツジが高いと考えられ、街路樹を選ぶ際により効率的な選択をする手助けとなると考えられる。