JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT23] [JJ] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)

[HTT23-P14] 付着藻類から読み取る富山県東部河川における森林地帯からの栄養塩供給

*増田 亮介1張 勁1片境 紗希1神林 翔太1 (1.富山大学)

富山県東部に存在する早月川から富山湾へ流入する栄養塩の起源は、硝酸態窒素安定同位体比(δ15N-NO3)から上流の森林地帯であることが指摘されている(張・佐野, 2014)。しかし、先行研究では標高1000m以下の地域にとどまっており,供給源にあたる森林地域が広がる標高1000m以上かつ複数の集水域を対象とした研究はされていない。本研究では、天井川で人為起源の影響が少ない早月川の河川水及び付着藻類を対象として、最上流部から河口までの水の動態把握と栄養塩供給の評価を目的とし,以下のことが明らかになった。
 1)早月川河川水のδ18O及びδDの測定結果から、試料採取を行った早月川上流では標高1300~1800m にもたらされた降水が河川水として流下しており[I1] 、また、δD=8δ18O+20の天水線(Craig, 1963)上にプロットされたため、早月川流域[I2] では夏季と冬期の降水が混合していることが示唆された。
 2)河川水の水質は、すべての地点でCa-HCO3型であり、付近[I3] 花崗岩等の岩石の風化が影響していると考えられるた。また、上流から下流にかけて、Ca2+, とHCO3- 濃度が増加していることから流下に伴い風化の程度が大きくなっていることが示唆されるた。さらに、付着藻類のδ13Cと河川水のCa2+, HCO3- に相関関係が確認され、付着藻類のδ13Cは、河川[I4] 流域のにおける地質の風化の程度を反映していると推測されるた。
3)河川水のNO3-濃度に着目すると、各集水域面積における落葉性植物の植生割合と同調的な類似した傾向が見られた。このことかられは、落葉性植物により生成された腐葉土層においてが生成され、有機物が分解される際に生じる硝酸が河川水に寄与していると考えられるた。また、河川水の涵養標高と付着藻類のδ15Nは標高約1500mを境面に、異なる傾向がみ見られた。この傾向は、標高1500m以上では植生が変化していく状況と一致することから、付着藻類のδ15Nは、集水域の植生の違いを反映している可能性ことが示唆された。