10:00 〜 10:15
[HTT25-05] 児童の認知空間における都市のゆがみ
キーワード:認知空間、認知地図、児童
近年,深刻な少子高齢社会となっているわが国では,子育て支援に重点をおいたまちづくりがおこなわれている.しかし,都市空間において子どもの成長の場として重要な公園などの遊び場では,ボール遊びなどの行動が禁止されていることが多く,子どもたちは自由に遊ぶことのできる場所をみつけにくくなっている.また,将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会,グローバル化が進展する社会の中で,地域や世界の多様性を理解し,持続可能な社会づくりの観点から地球規模の諸課題や地域課題を解決していく力を,次代を担う子どもたち,若者たちに育んでいくことが求められており,子どもの地理教育の充実が求められている.
これらのことから,子どもたちにとって魅力のあるまちづくりおよび高度な地理教育をおこなうためには,彼らが生活し育っていく場となる空間をどのように理解していき,彼らにとってそこがどのような意味を持つのかを,われわれ大人が理解することが必要である.そして,子どもたちとまちとの関わり合いを考えた上で積極的に子どもの意識を取り入れた取り組みをおこなうことが重要である.
本研究では,児童の認知空間を認知地図として取り出し,個人それぞれが認知するまちの姿と現実空間の関係を分析している.これまでの研究では,児童の認知空間と現実空間の差異をゆがみとして捕らえ,ゆがみを与える要素について分析をおこなってきた.これにより得られた認知空間のゆがみのうち,距離と空間要素に焦点を当て,それぞれがもたらす影響の解明を試みる.そして,児童の認知空間の構造を解明し,彼らとまちとの関わりあいの中で得られた魅力のある空間やまちの姿を見つけ出すことを目的としている.
研究方法として,小学5年生・6年生からアンケート調査により得られたデータを基にGISを用いた分析をおこなっている.はじめに,通学路と描画要素に着目した分析をおこない,平面における児童の認知空間の構造を把握する.次に,道路勾配と地形に着目し,高さ方向の認知空間の構造とゆがみを把握する.児童の日常生活を考慮するため,分析には道路ネットワーク空間を用いたネットワーク距離を使用している.
通学路と描画要素に着目した分析では,小学校3校の児童に対しておこなったアンケート調査により取得した認知地図のデータから,認知空間の平面におけるゆがみを分析した.はじめに,小学校1校のデータを基に,認知空間と現実空間とのゆがみを空間のイメージの拡大率として数値化し,児童それぞれの認知空間の特徴を把握した.その結果,拡大率には自宅周辺や通学路の外側などの空間位置と関係することが可能性として考えられた.そこで,通学路に着目しネットワーク空間上で空間位置の分類をおこなった.そして,分類ごとのイメージの拡大率や認知地図の描画要素数の傾向から認知空間の構造を把握した.
次に,分析結果を検証するため,小学校2校のデータを追加し同様の分析をおこなった.そして,各小学校の分析結果を比較することで,児童の認知空間のゆがみと空間位置との関係を明らかにした.
道路勾配や地形に着目した分析では,検証に用いた小学校2校の5年生・6年生のデータを基に認知空間の高さ方向のゆがみの分析をおこなった.はじめに,アンケート調査により認知空間の中で一番高い場所と一番低い場所を児童それぞれから把握した.アンケート調査の結果より,これらの場所として認知されやすい要素がまちの中に存在することを把握した.また,それぞれの要素が選択される原因について要素周辺の地形や建物との関係,その要素が持つ性質から考察をおこなった.結果としては,子どもたちが生活する空間の地形などの環境により認知される要素に違いがあることが明らかとなった.校区範囲の高低差が小さい地域に住む児童では,高さの認知に地形が考慮されないことが多くあり,建物高さや中に入ることができる高さの範囲が高い場所と低い場所を分類する重要な項目となることが考えられた.また,校区範囲内の高低差が大きい地域に住む児童では平坦な場所に住む児童と比較して,ある範囲や方向といった抽象的な概念でまちの中の高さ関係を認知している傾向が強くなることを把握した.
本研究では,子どもたちの認知空間と現実空間とのゆがみについてGISを用いて定量的に分析し,都市空間の中で子どもたちにとって重要となる要素を把握する試みであった.その結果,3次元空間における認知空間と現実空間のゆがみとその構造を把握することができた.
これらのことから,子どもたちにとって魅力のあるまちづくりおよび高度な地理教育をおこなうためには,彼らが生活し育っていく場となる空間をどのように理解していき,彼らにとってそこがどのような意味を持つのかを,われわれ大人が理解することが必要である.そして,子どもたちとまちとの関わり合いを考えた上で積極的に子どもの意識を取り入れた取り組みをおこなうことが重要である.
本研究では,児童の認知空間を認知地図として取り出し,個人それぞれが認知するまちの姿と現実空間の関係を分析している.これまでの研究では,児童の認知空間と現実空間の差異をゆがみとして捕らえ,ゆがみを与える要素について分析をおこなってきた.これにより得られた認知空間のゆがみのうち,距離と空間要素に焦点を当て,それぞれがもたらす影響の解明を試みる.そして,児童の認知空間の構造を解明し,彼らとまちとの関わりあいの中で得られた魅力のある空間やまちの姿を見つけ出すことを目的としている.
研究方法として,小学5年生・6年生からアンケート調査により得られたデータを基にGISを用いた分析をおこなっている.はじめに,通学路と描画要素に着目した分析をおこない,平面における児童の認知空間の構造を把握する.次に,道路勾配と地形に着目し,高さ方向の認知空間の構造とゆがみを把握する.児童の日常生活を考慮するため,分析には道路ネットワーク空間を用いたネットワーク距離を使用している.
通学路と描画要素に着目した分析では,小学校3校の児童に対しておこなったアンケート調査により取得した認知地図のデータから,認知空間の平面におけるゆがみを分析した.はじめに,小学校1校のデータを基に,認知空間と現実空間とのゆがみを空間のイメージの拡大率として数値化し,児童それぞれの認知空間の特徴を把握した.その結果,拡大率には自宅周辺や通学路の外側などの空間位置と関係することが可能性として考えられた.そこで,通学路に着目しネットワーク空間上で空間位置の分類をおこなった.そして,分類ごとのイメージの拡大率や認知地図の描画要素数の傾向から認知空間の構造を把握した.
次に,分析結果を検証するため,小学校2校のデータを追加し同様の分析をおこなった.そして,各小学校の分析結果を比較することで,児童の認知空間のゆがみと空間位置との関係を明らかにした.
道路勾配や地形に着目した分析では,検証に用いた小学校2校の5年生・6年生のデータを基に認知空間の高さ方向のゆがみの分析をおこなった.はじめに,アンケート調査により認知空間の中で一番高い場所と一番低い場所を児童それぞれから把握した.アンケート調査の結果より,これらの場所として認知されやすい要素がまちの中に存在することを把握した.また,それぞれの要素が選択される原因について要素周辺の地形や建物との関係,その要素が持つ性質から考察をおこなった.結果としては,子どもたちが生活する空間の地形などの環境により認知される要素に違いがあることが明らかとなった.校区範囲の高低差が小さい地域に住む児童では,高さの認知に地形が考慮されないことが多くあり,建物高さや中に入ることができる高さの範囲が高い場所と低い場所を分類する重要な項目となることが考えられた.また,校区範囲内の高低差が大きい地域に住む児童では平坦な場所に住む児童と比較して,ある範囲や方向といった抽象的な概念でまちの中の高さ関係を認知している傾向が強くなることを把握した.
本研究では,子どもたちの認知空間と現実空間とのゆがみについてGISを用いて定量的に分析し,都市空間の中で子どもたちにとって重要となる要素を把握する試みであった.その結果,3次元空間における認知空間と現実空間のゆがみとその構造を把握することができた.