JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT25] [JJ] 地理情報システムと地図・空間表現

2017年5月20日(土) 09:00 〜 10:30 106 (国際会議場 1F)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)、座長:吉川 眞(大阪工業大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学)

10:15 〜 10:30

[HTT25-06] 中間領域と歩行者行動の関係

*矢延 徹也1田中 一成1吉川 眞1 (1.大阪工業大学大学院)

キーワード:都市公共空間、中間領域、歩行者行動

現在、都市公共空間は無駄をなくそうと余裕を持たせず設計がおこなわれている。内外空間はそれぞれ異なる個性をもっており、時に対立を起こす場合がある。そのため、外壁という明確な境界で区分がおこなわれ、分けてはいけない事柄で区分した可能性がある。これにより、外部空間における歩行者や車は移動だけを目的に利用している現状がある。こういった問題を解決していくために、まず内部空間、外部空間それぞれの空間を理解し、その空間概念や特性に基づき、両空間を緩衝させる空間を都市公共空間にもたせる必要がある。日本の伝統的な街並みや欧米の街並みの多くは、内部空間と外部空間の境界部分において、中間領域といった範囲や役割も明確ではない曖昧な空間が存在する。中間領域は対立し合う互いの個性に対応できる空間であり、対立するもの同士の交流の場になると考えられる。近年の都市再開発事業では歩道を豊かにすることを目的にオープンテラスやピロティの配置から建物と歩道の役割を調和させる試みが成されている。中間領域は多数点在し、その空間を歩く歩行者に影響を与え、新たな空間として成立している可能性が考えられる。
本研究は、このような背景のもと、現地調査によって歩行者行動軌跡を取得し、空間がもたらす歩行者影響範囲を見いだす詳細な分析へと展開する。これにより、建物側と歩道側両方に影響を及ぼす領域として中間領域の存在と意味を明らかにする。具体的にはまず、デジタイズソフトを用いて歩行者軌跡データを作成し、歩行者行動指標を算出することによって、歩行者の立ち止まりやすい空間、よく曲がりやすい空間、あまり行き来されない空間等を明らかにする。さらに、歩行者が次に移動する空間への確率として遷移確率を求め、街路空間を構成する代表的な空間構成要素との関係性を明らかにする。最終的に空間構成要素の歩行者影響範囲を把握することによって、中間領域を視覚化する。

空間には、歩道、柱、色、樹木といった様々な空間構成要素が存在する。その空間構成要素は、各々の対象地によって異なり、特徴は様々である。そこで、対象地を選定するにあたって、様々な空間要素を考慮し、選定する必要がある。そこで、本研究は他の地域と比べ、公的な充実した歩道整備が実施された兵庫県神戸市旧居留地を対象地に選定した。神戸市旧居留地は、貿易の拠点や西洋文化の入り口として栄え、周辺地域に経済的、文化的影響を与えた。現在は、外国人の暮らした面影を残す観光地としても魅力的な街並を誇っている。1992年には国土交通省の都市景観100選に選定、2007年には日本都市計画学会の最高賞である石川賞を受賞している。

歩行者行動データの取得にあたり、歩行者の軌跡をたどるために歩行者軌跡追尾ソフト(Dipp MotionV)を用いる。VTR上を移動する歩行者を自動追尾することによって、画像のxy座標を取得できる「Dipp MotionⅤ」を用いてデータ化をおこなう。本研究では、取得間隔を1秒、測定位置は男性、女性ともに頭部中央を基本として測定した。VTR上にフレームインし、フレームアウトするまでを一人の歩行者と定義する。取得する画像座標から地上座標に変換するにあたり、座標変換には三次元斜影変換式を用いる。この三次元斜影変換式は地上座標(X,Y,Z)とそれに対応する画像座標(X,Y)を6点以上用いることにより、未知パラメータを推定することができる。

分析では、建物と歩道における捉えにくい空間が歩行者行動に影響を与えていると仮定し、対象となる空間において、歩行者がどのような行動をとっているかを把握する。本研究ではこれを踏まえ、歩行者行動指標である歩行者速度、歩行者進行角度、歩行者流動値に着目する。また、中間領域につながる空間分析へと展開するために歩行者が次にどこへ進むかを確率で指標化した遷移確率を算出する。さらに、歩行者の遷移確率や歩行速度等はその場に存在する空間構成要素に依存していると仮定し、空間構成要素各々の持つ影響範囲を明らかとする。影響要素の選定にあたり、街路空間の大部分を構成している要素を選定する。本研究では、①壁、②ショーウィンドウ、③柱、④ドア、⑤樹木を対象要素とした。また、各影響要素が歩行者に与える範囲は、大きく2つの点に絞り条件づけた。1つ目は既往研究によって、歩行者が各空間構成要素を認識できる距離、また回避し始める距離等を参考にする。2つ目は各空間構成要素が見える範囲として可視•不可視分析をおこなう。最終的に、影響範囲を条件づけた後、遷移確率と各要素までの距離の関係性を把握し、空間構成要素の影響範囲を3次元的に表現することにより中間領域を視覚化する。