JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT25] [JJ] 地理情報システムと地図・空間表現

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 106 (国際会議場 1F)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、座長:王尾 和寿(筑波大学)

11:00 〜 11:15

[HTT25-08] スカイラインの景観分析

*岡部 雄基1吉川 眞1田中 一成1 (1.大阪工業大学大学院)

キーワード:スカイライン、景観分析、山並み、建築群

わが国は、地域による気候や風土の多様性から、緑豊かな美しい自然景観に恵まれている。国土の約70%を山岳地帯が占めており、先進国有数の山国である。その美しさは海外からも高い評価を受けている一方で、戦後の経済成長の下、各地で自然や景観の破壊が進んだ。しかし、人口減少の時代を迎え、国土開発は美しい国づくりへと転換しつつある。このような社会情勢は、国民の意識にも変化を与え、景観に関する人々の考えも変化してきている。

 また、多様化が進む国土や国民生活に関わる事象の多くは、地理空間情報として捉えることができ、われわれの身の回りは多くの地理空間情報で満ちあふれている。身近な問題から、わが国が抱える社会的な問題まで、その問題の解決には地理空間情報の全体像を把握することが必要となってきている。この、さまざまな分野で注目を浴びている地理空間情報は、都市デザイン・景観デザインの分野においても、都市の質的向上へむけて大きな手がかりになると考えられる。本研究では、こうした地理空間情報を用いて、客観的・定量的に評価するために景観分析を行っている。

 近年、主要な各都市では、都市の再開発が進められてきている。中心市街地では、土地利用と都市機能の更新を図るため、多くの高層建築物が存在する。これらの高層建築物は、都市の山脈を形成している。一方、大都市の多くは背後に山々を抱えており、どちらも市街地内やその周辺でスカイラインを形成している。これらのことから、著者らは2つのタイプのスカイラインの分析を試みている。

 研究の方法として、主にGIS(Geographic Information Systems)を活用している。用いるデータは、基盤地図情報や航空機搭載型レーザ測量データ(LiDARデータ)といった空間データを使用している。研究の対象地として、都市化が進み再開発事業も多く行われていながら、周囲を山々に囲まれているといった地形的特徴を持つ大阪平野を選定し、山々と都市それぞれの観点から分析を行っている。山々のスカイラインでは、都市内から周囲の山々を眺めた際の視覚的影響として、可視領域を把握し、そこからスカイライン位置を明らかにしている。その後、視点と対象をそれぞれ山に設定し、山々から眺めた際の周囲の山々がどのように眺められるのかを把握している。また、都市のスカイラインでは、大阪平野内の中でも中心市街地である大阪市を対象としている。都市内での分析では、大阪市をメッシュに分割しており、大阪市内から眺めた際に市内の建築群がつくりだすスカイラインを形成する可能性の出現頻度を算出している。そして、都市内でも周囲の山々から大阪市内がどのように眺められるかといった分析を行っている。

 結果として本研究では、各山地の眺めの特性を把握することができ、大阪市内でのスカイラインになる可能性の高いメッシュを抽出することができた。大阪平野のような地形的特徴を持つ場所は少なく、これからの市街地整備を行っていくにあたっては、自然と人工物の両方を考慮していくことが必要であると考えている。

 本研究では、局所的な景観ではなく、地域全体の景観価値を対象としている。そして、GISを活用することによって、視点と対象の相互関係を分析することができた。景観を客観的・定量的に評価するツールとしてGISを用いることは、有効な手段であると考えられる。今後は、得られた結果をもとに、景観シミュレーションへと展開していくことを考えている。