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[HTT26-05] 地中レーダの反射波形に着目した坑道近傍の割れ目内の地下水評価
キーワード:地中レーダ、掘削影響領域、地下水
割れ目を有する岩盤構造物においては、岩盤の割れ目内の地下水流動特性を評価することは重要である。特に、地下の岩盤空洞掘削時において空洞周辺に割れ目の発生、進展、応力状態の変化、間隙水圧の変化が生じる。このような変化が生じる領域をEDZ (Excavation Damaged Zone、掘削影響領域)と呼ぶ。EDZ内の割れ目群は、岩盤空洞の力学安定に関する問題を生じさせると共に地下水の透水経路としての問題も生じさせる。これら坑道周辺に発達する割れ目群はトンネル湧水や湧水の浸潤による支保の劣化の原因や、石油やLPGの水封式岩盤貯蔵における水封システムのトラブルの原因となる。特に、高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、これらの割れ目群が処分場の安全性に影響を与えることから、EDZ内の水みちとしての割れ目や不飽和割れ目を調査により評価しておくことは重要である。
これらの割れ目は坑道近傍に3次元的に、断続的に、チャンネル状に分布していると考えられる。しかし、ボーリング孔を利用した調査では、調査時に水理場が乱れる可能性があり、また点による評価であり、面的な分布の評価に限界がある。これに対し、筆者は電磁波探査の一つである地中レーダの適用について研究を進めている。電磁波の伝搬特性は水分の影響に敏感であることから、弾性波を用いる方法では把握できない地下水の評価に適している。また、中心周波数数百MHzのレーダを用いる場合、電磁波の波長が短いため数cm程度の高分解能が期待できる。さらに地中レーダによる探査法は岩盤内部を非破壊で調査する手法であるため、岩盤内の水みちの面的な分布を水理場を乱さずに調査することができる。このため地中レーダは坑道近傍数m以内の岩盤割れ目内の地下水情報を得る最適な調査手法であると考えられるが、これまでは割れ目の幾何学的な分布情報の取得にとどまっている。本研究では、地中レーダの反射波形に着目することにより岩盤割れ目内の地下水に関する評価を実施することが可能か検討を行った。
地中レーダの反射波形に着目する本評価手法は、反射境界面となる媒質の電磁気特性に応じて反射波形の振幅強度や卓越周波数が変化することを利用し、反射波形の変化から岩盤割れ目内の地下水の浸透状況を評価しようとするものである。この評価手法の確立のためには、割れ目のような薄い反射面であっても、内部の液体の電磁特性の変化が反射波の波形変化により評価可能であることを理論的、実験的に示すことが必要である。
初めに、電磁波の理論的な検討とFDTD法による反射波形の数値シミュレーションを行った。この結果、反射面となる割れ目内における水の存在の有無や塩水のような高導電性の媒質が存在する場合において、反射波形の振幅や卓越周波数が異なることが分かった。これは経時的な計測により反射波形の変化を捉えられれば、割れ目内の浸透状況の評価が可能であることを示している。
次に、この評価方法が実際のフィールドにおいて適用可能か確認するため、流動化処理土に挟まれた模擬割れ目1)、コンクリートと岩盤の境界面2)、花崗岩中の割れ目3)を対象として実験的な検証を行った。この結果、対象とする割れ目からの反射波に着目し、初動の大きさや後続波の変化、卓越周波数の変化をモニタリングすることで割れ目内の浸透状況を評価できる可能性が示された。
これらの検討の結果、地中レーダを活用し坑道近傍の岩盤内割れ目の媒質の変化を評価するための手がかりが得られたと考えられる。本評価方法は、放射性廃棄物の地層処分分野だけでなく土木分野へも活用分野が広がることが期待できる。
参考文献
1) 升元一彦・栗原啓丞(2014):模擬亀裂を用いた地中レーダによる亀裂性岩盤の地下水浸透状況調査に関する検討,応用地質,55巻,1号,p.17-27.
2) 升元一彦・栗原啓丞(2015):地中レーダによる地下空洞近傍の亀裂性岩盤の地下水浸透状況調査,第43回岩盤力学に関するシンポジウム講演集,p.188-192.
3) 升元一彦・竹内竜史(2016):地中レーダを用いた坑道近傍の岩盤内の水みちとしての割れ目の評価,応用地質,57巻,4号,p.154-161.
これらの割れ目は坑道近傍に3次元的に、断続的に、チャンネル状に分布していると考えられる。しかし、ボーリング孔を利用した調査では、調査時に水理場が乱れる可能性があり、また点による評価であり、面的な分布の評価に限界がある。これに対し、筆者は電磁波探査の一つである地中レーダの適用について研究を進めている。電磁波の伝搬特性は水分の影響に敏感であることから、弾性波を用いる方法では把握できない地下水の評価に適している。また、中心周波数数百MHzのレーダを用いる場合、電磁波の波長が短いため数cm程度の高分解能が期待できる。さらに地中レーダによる探査法は岩盤内部を非破壊で調査する手法であるため、岩盤内の水みちの面的な分布を水理場を乱さずに調査することができる。このため地中レーダは坑道近傍数m以内の岩盤割れ目内の地下水情報を得る最適な調査手法であると考えられるが、これまでは割れ目の幾何学的な分布情報の取得にとどまっている。本研究では、地中レーダの反射波形に着目することにより岩盤割れ目内の地下水に関する評価を実施することが可能か検討を行った。
地中レーダの反射波形に着目する本評価手法は、反射境界面となる媒質の電磁気特性に応じて反射波形の振幅強度や卓越周波数が変化することを利用し、反射波形の変化から岩盤割れ目内の地下水の浸透状況を評価しようとするものである。この評価手法の確立のためには、割れ目のような薄い反射面であっても、内部の液体の電磁特性の変化が反射波の波形変化により評価可能であることを理論的、実験的に示すことが必要である。
初めに、電磁波の理論的な検討とFDTD法による反射波形の数値シミュレーションを行った。この結果、反射面となる割れ目内における水の存在の有無や塩水のような高導電性の媒質が存在する場合において、反射波形の振幅や卓越周波数が異なることが分かった。これは経時的な計測により反射波形の変化を捉えられれば、割れ目内の浸透状況の評価が可能であることを示している。
次に、この評価方法が実際のフィールドにおいて適用可能か確認するため、流動化処理土に挟まれた模擬割れ目1)、コンクリートと岩盤の境界面2)、花崗岩中の割れ目3)を対象として実験的な検証を行った。この結果、対象とする割れ目からの反射波に着目し、初動の大きさや後続波の変化、卓越周波数の変化をモニタリングすることで割れ目内の浸透状況を評価できる可能性が示された。
これらの検討の結果、地中レーダを活用し坑道近傍の岩盤内割れ目の媒質の変化を評価するための手がかりが得られたと考えられる。本評価方法は、放射性廃棄物の地層処分分野だけでなく土木分野へも活用分野が広がることが期待できる。
参考文献
1) 升元一彦・栗原啓丞(2014):模擬亀裂を用いた地中レーダによる亀裂性岩盤の地下水浸透状況調査に関する検討,応用地質,55巻,1号,p.17-27.
2) 升元一彦・栗原啓丞(2015):地中レーダによる地下空洞近傍の亀裂性岩盤の地下水浸透状況調査,第43回岩盤力学に関するシンポジウム講演集,p.188-192.
3) 升元一彦・竹内竜史(2016):地中レーダを用いた坑道近傍の岩盤内の水みちとしての割れ目の評価,応用地質,57巻,4号,p.154-161.