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[HTT26-10] 地下水低下工法による潮来市日の出地区のレーリー波位相速度変化: 極小微動アレイ解析のケーススタディ
キーワード:微動、アレイ、表面波、液状化、2011年東北沖地震 、地下水低下工法
茨城県潮来市日の出地区では2011年東北沖地震によって甚大な液状化被害が生じた.現在,同地区では液状化被害の再発を抑制するために地下水低下工法が試みられている.本発表では,極小微動アレイ解析(Cho et al., 2013)のケーススタディとして,同工法着工前後のデータを解析した際に見られたレーリー波位相速度の変化について報告する.
日の出地区では地下水低下工法に従って,ほぼすべての道路に沿って深さ3mに排水管が埋設され (施工期間2013年4月~2016年3月),揚水ポンプで地下水が汲み上げられている(稼働時期2016年5月~2017年1月現在).こうして地下水位を3m深まで下げてその水位を維持することにより甚大な液状化被害の再発を防げると試算されている(潮来市, 2016).
我々は,2012年8月および2013年5月初旬に,日の出地区(約2.8kmx1.5km)とその周辺を横断する長さ3.2kmの東西測線に沿って極小微動アレイ観測を実施した.半径60cmの4点アレイと半径約5mの3点不規則アレイのセットを基本とし, 約200m間隔で観測を行った.各地点で15分間微動を観測した.一方,Yokota et al. (2016)は,2012年12月に日の出地区とその周辺を含む1.2kmから1.6kmの3本の測線に沿って表面波探査を実施した.以下では微動による東西測線と表面波探査による2本の南北測線の合計3本で取得されたレーリー波位相速度及びS波速度を「着工前のデータ」として参照する.
「着工後のデータ」として,2015年9-10月に上述の3測線に沿いに極小微動アレイ観測を実施した.東西測線では個々のアレイ設置位置が前回と同一となるように注意した.表面波探査測線沿いには約100m間隔でアレイ観測を実施した.なおすべての微動観測は舗装道路の路肩で行われたため,着工後のデータには工事による物性変化の影響が含まれると期待される.
こうして得られた着工前後の東西測線の分散曲線を比較したところ,日の出地区では特に高周波数帯域で位相速度が高くなっていることが分かった.S波速度構造を簡易解析によれば,変化したのは5~6m以浅のS波速度のようである.表面波探査測線沿いの極小アレイによるS波速度構造についても同様の傾向が見られた.すなわち,微動観測によるS波速度の空間分布は表面波探査と良く似たパターンを示すが,日の出地区内の5~6m以浅に限ってはS波速度が相対的に高かった(添付図参照).
日の出地区の浅部についてのみ速度構造の変化が見られたことは定性的には自然であり,極小微動アレイのポテンシャルを期待させる結果である.今後はより定量的に極小微動アレイの可能性と限界を検討する予定である.
Cho et al., 2013, Geophysics, 78, KS13-KS23.
潮来市, 2016, http://www.city.itako.lg.jp.
Yokota et al., 2016, Exploration Geophysics (in press).
日の出地区では地下水低下工法に従って,ほぼすべての道路に沿って深さ3mに排水管が埋設され (施工期間2013年4月~2016年3月),揚水ポンプで地下水が汲み上げられている(稼働時期2016年5月~2017年1月現在).こうして地下水位を3m深まで下げてその水位を維持することにより甚大な液状化被害の再発を防げると試算されている(潮来市, 2016).
我々は,2012年8月および2013年5月初旬に,日の出地区(約2.8kmx1.5km)とその周辺を横断する長さ3.2kmの東西測線に沿って極小微動アレイ観測を実施した.半径60cmの4点アレイと半径約5mの3点不規則アレイのセットを基本とし, 約200m間隔で観測を行った.各地点で15分間微動を観測した.一方,Yokota et al. (2016)は,2012年12月に日の出地区とその周辺を含む1.2kmから1.6kmの3本の測線に沿って表面波探査を実施した.以下では微動による東西測線と表面波探査による2本の南北測線の合計3本で取得されたレーリー波位相速度及びS波速度を「着工前のデータ」として参照する.
「着工後のデータ」として,2015年9-10月に上述の3測線に沿いに極小微動アレイ観測を実施した.東西測線では個々のアレイ設置位置が前回と同一となるように注意した.表面波探査測線沿いには約100m間隔でアレイ観測を実施した.なおすべての微動観測は舗装道路の路肩で行われたため,着工後のデータには工事による物性変化の影響が含まれると期待される.
こうして得られた着工前後の東西測線の分散曲線を比較したところ,日の出地区では特に高周波数帯域で位相速度が高くなっていることが分かった.S波速度構造を簡易解析によれば,変化したのは5~6m以浅のS波速度のようである.表面波探査測線沿いの極小アレイによるS波速度構造についても同様の傾向が見られた.すなわち,微動観測によるS波速度の空間分布は表面波探査と良く似たパターンを示すが,日の出地区内の5~6m以浅に限ってはS波速度が相対的に高かった(添付図参照).
日の出地区の浅部についてのみ速度構造の変化が見られたことは定性的には自然であり,極小微動アレイのポテンシャルを期待させる結果である.今後はより定量的に極小微動アレイの可能性と限界を検討する予定である.
Cho et al., 2013, Geophysics, 78, KS13-KS23.
潮来市, 2016, http://www.city.itako.lg.jp.
Yokota et al., 2016, Exploration Geophysics (in press).