JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT26] [JJ] 浅層物理探査

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、高橋 亨(公益財団法人深田地質研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

[HTT26-P04] トンネル舗装面からの浅部地山の弾性波速度の測定とその評価

*岡崎 健治1山崎 秀策1倉橋 稔幸1伊東 佳彦1丹羽 廣海2村山 秀幸2 (1.国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所、2.(株)フジタ)

キーワード:トンネル、弾性波速度、時間依存性を有する変状

供用から数年~数十年経過後のトンネルにおいて盤ぶくれや側壁の押出し等,地山の地質変化に起因した時間依存性を有する変状の事例が報告されており,車両通行への影響,補修コストの観点から大きな課題となっている.地山自体を対象とした調査や点検は,変状の確認後に行われるのが一般的で,時間依存性を有する変状が顕在化する前に診断するための技術がないのが現状である.
本報告では,熱水変質を受けた安山岩質火山岩類の地山で変状が生じた新旧2つのトンネルにおいて,舗装面から地山を対象に屈折法地震探査を実施し,その弾性波速度の分布に基づいて地山の状態を診断するための方法を適用した事例について述べる.新旧トンネルの主な地質は,変質安山岩~非変質の安山岩溶岩である.新トンネルでは,施工時に約10cmの路盤隆起が2箇所で生じたため対策が行われた.旧トンネルでは,完成から3年後に計5つのブロックでインバートや側壁の変状が顕在化し,急激な路盤隆起等が確認されたことから数次にわたる対策工事が行われた.本調査では,変状の発生箇所を含む区間で,油圧インパクタを使用した屈折法地震探査による弾性波速度を測定した.本震源によるP波の発震は鉛直下向きに3~6mの間隔で打撃した.S/N比の向上を目的に1箇所あたり3回ずつスタックした.測定長は,新トンネルで450m,旧トンネルで1,500mである.測定では舗装面に3成分MEMS型(Micro Electro Mechanical Systems)の受振器を3点式のスタンドを用いて6m間隔で設置し,記録した波形データを屈折波トモグラフィ解析を実施し,弾性波速度構造を求めた.
新トンネルにおけるP波速度の分布は,概ね10m以深では3,400~4,000m/s程度であり,表層部より相対的に高い傾向を示した.また,旧トンネルにおけるP波速度の分布は,時間依存性を有する変状が認められた1~5ブロックの下で低い傾向にある.トンネルの健全部に相当する範囲では比較的高い.トンネルの変状は,とくに4ブロックで盤ぶくれや側壁の押し出しによる変位が顕著だが,探査結果では,4ブロックでP波速度が低い領域が深部まで確認でき,実際の変状の発生状況と整合している.地山の地質構造が深部方向に連続あるいわ比較的均質であり,時間依存性変状あるいは,応力解放に伴う緩みによるP波速度の低下が,トンネル周囲から,すなわち深度0 mから深部に向かって次第に進行すると考えると,深部ほど掘削の影響を受けていない地山本来のP波速度に近い値を示すと考えることができる.つまり,表層のP波速度の低い領域は,もともとは深部の高いP波速度を有していたはずだが,トンネル掘削にともなって現在の値まで低下したと考えられる.このように仮定すると,表層部のP波速度が深部のP波速度との比率で何%低下しているかを求めることで,現状のトンネル周囲の地質の健全度を評価することができると考えられる.健全部では,P波速度低下率が8%~16%と小さいのに対し,時間依存性を有する変状の発生箇所では,1~4ブロックで36%~44%,5ブロックは他のブロックに比べて小さいが25%と試算される.本トンネルの地質の場合,変状に至る⊿Vpの閾値は16%~25%の間にある可能性が示唆される.