[MGI27-P11] 社会との協働が切り拓くオープンサイエンスの未来:日本におけるマルチステークホルダー・ワークショップの報告
★招待講演
キーワード:社会協働による課題設定、未来予測、マルチステークホルダー・ワークショップ、科学技術政策、日本
地球環境問題や少子高齢化などの社会課題の解決をめざす研究には、異分野の研究者や政府・自治体、企業、NPO、地域住民など社会の多様なステークホルダーが知識経験を持ち寄り、立場を超えた対話と熟議を通して研究計画の共同立案(co-design)、知識の共同生産(co-production)、成果の共同展開(co-dissemination)を行い、課題解決に向けた意思決定をリードする(co-leadership)という超学際アプローチ(transdisciplinary approach)が重要である。近年、ITやソーシャルデザインなどの技術知を持つプロボノ(専門技能ボランティア)がオープンデータを活用して、社会課題の解決に積極的に関与するようになった。今後、研究者とプロボノが、社会の多様なステークホルダーと協働することにより、研究データのオープン化と市民科学(シチズンサイエンス)が結びつき、課題解決が促進されるとともに、社会との協働をより強く意識したオープンサイエンスの実現が期待される。しかし、その具体的方法や問題点についてはまだ事例の蓄積が少ない。そこで、2017年1月に京都で、人文・社会科学と自然科学系の研究者、政府関係者、地方行政職員、企業職員、プロボノ(高度技能ボランティア)、図書館員など37名の参加者によるマルチステークホルダー・ワークショップを開催し、グループ対話のテーマを当日決めるアンカンファレンス方式により、社会との協働を念頭に置いた際のオープンサイエンス政策の課題を多角的に検討した。その結果、オープンサイエンスの取り組みは、各研究分野の慣習として積み上げていく必要があること、市民科学にはデータ基盤の共同構築と社会転換のためのアクションという2つの役割があること、研究者コミュニティーと社会の知識体系を双方向的に連環する橋渡し人材を魅力的な職業として確立する必要があることなどが気づきとして得られた。本発表では、これらの論点を整理した上で、社会のニーズに照らしたオープンサイエンスの推進に必要な方策を提示する。