JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI31] [JJ] ソーシャルメディアと地球惑星科学

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 202 (国際会議場 2F)

コンビーナ:天野 一男(茨城大学理学部地球生命環境科学科)、小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、伊藤 昌毅(東京大学生産技術研究所)、山本 佳世子(国立大学法人 電気通信大学)、座長:天野 一男(茨城大学理学部地球生命環境科学科)、座長:伊藤 昌毅(東京大学生産技術研究所)

14:45 〜 15:00

[MGI31-05] 拡張現実を用いた観光回遊行動支援システム

*山本 佳世子1 (1.国立大学法人 電気通信大学)

キーワード:拡張現実、Web-GIS、ソーシャルメディア、推薦システム、ARリコメンドGIS、観光回遊行動

近年,高度情報化が進行している日本において,多種多様な情報がインターネットにより発信されている.観光分野においても同様に様々な情報がインターネットにより発信され,インターネットは観光旅行を計画したり,目的地周辺の情報を検索したりするための主要な情報源になっている.しかし情報量の多さや種類の多様さなどにより,利用者自身だけで必要な情報を適切に選択し,取得することが難しくなっている.特に都市部の観光地では,地方の観光地と比べて投稿・公開される情報が非常に多く,知識や土地勘の少ない人々が観光に必要な情報を効率的に取得することが難しいため,利用者を適切な情報に導くための情報システムが必要となってくる.
近年では小型かつ多機能の携帯情報端末が普及しつつあるため,人々は日常生活の様々な場面でこれを便利に利用することができる.日本の都市型観光地では特定地域に観光スポットが集中しているため,歩行で複数の観光スポットを回遊することが主流になっている.歩行観光では観光計画を柔軟に変更することができるが,知らない街で歩きながら携帯情報端末で観光スポットについて調べることは不便であり,危険も伴う.一方,バーチャルリアリティ(VR)の応用例の1つとして,拡張現実(AR)が近年注目されており,実用化が進んでいる.ARの技術を用いると,VRとは異なり,利用者を取り巻く現実空間において,仮想空間で蓄積した情報の提示を行うことができる.この技術は携帯電話などの端末で以前から多用されているが,利便性を考慮したメガネ型AR端末などの特徴的な専用端末も最近は発売されている.そこで,都市型観光地における歩行での観光回遊行動においては,既存の携帯情報端末に加えてこのようなAR技術の導入も期待される.
本研究は以上の背景を踏まえて,多種多様な情報が発信されている都市型観光地において,情報の蓄積・共有・推薦を可能にすることで観光回遊行動を支援するための情報システム(ARリコメンドGIS)を構築することを目的とする.具体的には,Web-GIS・SNS・推薦のシステムを統合し,様々な状況でシステムを利用できるように,PC・携帯情報端末・メガネ型のAR端末の3種類の情報端末に適したシステムを構築する.
本研究の結論は以下の3点に要約することができる.
(1) SNS,Twitter,Web-GIS,推薦システム,スマートグラスを統合し,都市型観光地において情報の蓄積・共有・推薦を可能にすることで観光回遊行動を支援するために,ARリコメンドGISを設計・構築した.これにより,情報検索の制約,安全性を考慮した空間的制約,継続的運用に関する制約の緩和を可能にした.また運用対象地域として神奈川県横浜市中心部のみなとみらい地区周辺を選定し,現状調査を行った後にシステムの詳細を構成した.
(2) 運用は8週間にわたって行うため,事前に運用試験を1週間行い,改善点を抽出しシステムを再構築した.利用対象者は運用対象地域内外に関わらず18歳以上としたところ,利用者91名のうち20~40歳代が合計約91%,最終的な投稿情報総数は161件であった.またスマートグラスを用いたシステム運用は,みなとみらい地区において観光客を対象として行ったところ,34名の利用者で年代は分散しており,全員がスマートグラスを利用した経験がなかった.
(3) 運用後の利用者を対象としたアンケート調査結果から,情報端末の使い分けを前提とした本システムは,利用者の観光スポット情報の収集方法に適合しており,閲覧機能と推薦機能を用いて観光スポット情報を収集するために主として利用されたことが明らかになった.本運用中のログデータを利用したアクセス解析結果から,本システムの利用方法はPCと携帯情報端末とでほぼ類似していたことが示された.またメガネ型AR端末を用いた本システムの評価も非常に良好であったことから,本システムはPC・携帯情報端末・メガネ型AR端末を用いて観光回遊行動の支援が可能であることが明らかになった.