JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI32] [JJ] 計算科学による惑星形成・進化・環境変動研究の新展開

2017年5月22日(月) 09:00 〜 10:30 104 (国際会議場 1F)

コンビーナ:林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、小河 正基(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、井田 茂(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、座長:牧野 淳一郎(理化学研究所計算科学研究機構)

09:15 〜 09:30

[MGI32-02] 衝突破壊プロセスを入れたN体計算における原始惑星の動径方向移動

*小南 淳子1台坂 博2牧野 淳一郎3藤本 正樹4 (1.東京工業大学、2.一橋大学、3.神戸大学、4.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:N体計算、衝突破壊、タイプ1惑星移動

従来のN体計算による惑星集積過程の研究では、衝突した微惑星は破片等をださずに合体して一つの新しい微惑星になると仮定されていた(完全合体の仮定)。これは、破壊や破片の生成を取り入れると、粒子数が増大し、計算時間が膨大になるためである。完全合体だと微惑星の成長と共に粒子数が減少するので、初期の粒子数を大きくとれる。しかし、破壊によって生成された破片は力学的摩擦によって原始惑星及び微惑星の速度分散を引き下げるため、惑星形成過程に大きな影響を持つ。このため、N体計算には破壊過程を正しく取り入れることが必須である。

衝突破壊を入れると、質量の小さな微惑星が大量に生成され、ガス抵抗の効果でその速度分散が小さくなる。その速度分散の小さい大量の微惑星が原始惑星の周りに存在することで原始惑星のplanetesimal driven migration (PDM) が促進される可能性がある。このPDMは外側に原始惑星を運ぶこともあるので、その場合、タイプ1惑星移動による惑星落下をある程度防ぐ可能性がある。

本研究では、ガス円盤の効果(ガス抵抗、タイプ1惑星移動)と破壊モデルを入れた大規模なN体計算をおこない、惑星移動がどうなるかを調べた。その結果、衝突破壊を入れると原始惑星の周りに質量が小さく速度分散の小さい微惑星が生成された。これらの小さい微惑星があることで、質量の大きい微惑星のみだった場合より、原始惑星の外側へのPDMがより連続的に起こりやすくなった。衝突破壊により生成された小さい微惑星は、PDMによる原始惑星の外側移動を促進させることにより、タイプ1惑星移動による中心星落下を防ぐことができるという結果になった。