JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS02] [EE] 火山噴煙・積乱雲のモデリングとリモートセンシング

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、前野 深(東京大学地震研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、座長:佐藤 英一(気象研究所)

11:45 〜 12:00

[MIS02-05] 粒径分布の層序変化からみた新燃岳2011年準プリニー式噴火

*入山 宙1寅丸 敦志2 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)

キーワード:grain-size distribution, pyroclasts, temporal variation, mass eruption rate

降下火砕堆積物を構成する火砕物の粒径分布は空間的に変化し,噴出物の輸送過程と噴火の時間発展を反映していると考えられる.降下火砕堆積物の粒径分布から噴火現象を復元するために,これまでに我々は噴出物輸送と堆積過程に関する理論的研究を行い,噴火現象と堆積構造の間に成り立つ定量的な関係を導出してきた.本件では降下火砕堆積物の粒径分布の層序変化から噴出初期の粒径分布の時間発展を推定する2次元モデルを新燃岳2011年噴火に応用する.
新燃岳は2011年1月26日から27日にかけて3日の準プリニー式噴火を経験した.一連の噴火現象は,地球物理学的観測によって,噴火最中の噴煙柱高度(新堀・他, 2013)や地殻変動量(Ueda et al., 2013)の時間変化が報告されている.一方,1回目の準プリニー式噴火で形成された降下火砕堆積物中を構成する火砕物の粒径分布は,堆積層下部で上方粗粒化し,その後堆積層上部で上方細粒化している(入山・寅丸, 2015).2次元モデルを用いて堆積物粒径分布の層序変化を噴出初期の粒径分布の時間変化に変換し,地球物理的に観測された噴火の時間変化と粒径分布の時間変化を直接比較する.
応用の結果推定された噴出初期の粒径分布の時間変化は,粗粒粒子が噴火初期に増加し,噴火後期に減少する変化を示した.粒径分布の時間変化の特徴を定量的に評価するため,推定された粒径分布を時間ごとに冪分布近似を行い,冪数の時間変化を調べた.その結果,噴出初期粒径分布は,噴火初期で冪数が減少(粗粒化)し,噴火後期で冪数が増加(細粒化)することが示された.
定常条件下での噴煙モデル計算により,噴出物の粒径分布,噴出率および最大噴煙高度の関係が得られている(Girault et al., 2014).本研究によって得られた粒径分布の時間変化および,観測によって得られた噴煙高度の時間変化をモデル計算の結果と比較したところ,噴火中の噴出率の時間変化が示唆された.粒径分布および噴煙高度から期待される噴出率は,噴火初期に噴出率が増加し,噴火後期に噴出率が低下するという時間変化を示し,測地学的な観測によって得られる地殻変動量の時間変化と整合的である.