JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] [EE] Living on the edge! Geodynamics, Tectonics and Paleogeography of East Asia during the Phanerozoic

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 103 (国際会議場 1F)

コンビーナ:Daniel Pastor-Gal?n(Center for North East Asian Studies, Tohoku University)、辻森 樹(東北大学)、磯崎 行雄(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、Uyanga Bold(The University of Tokyo)、座長:Bold Uyanga(The University of Tokyo)、座長:Pastor-Galan Daniel(Center for North East Asian Studies, Tohoku University)

11:15 〜 11:30

[MIS08-03] 東京都西部、黒瀬川帯蛇紋岩からの太古代前期(35億年前)ジルコンの産出

*沢田 輝1磯崎 行雄1坂田 周平2 (1.東京大学広域科学専攻、2.学習院大学化学専攻)

キーワード:zircon U-Pb age, serpentinite, Archean, Kurosegawa belt

東京都日の出町の秩父帯に産する蛇紋岩より, 太古代ジルコン18粒を発見した. 同町坂本地域に狭小に露出する蛇紋岩は中期古生代の圧砕花崗岩類や青色片岩などを伴い, 四国や紀伊半島の黒瀬川帯の延長部最東端にあたる. 分離したジルコンはいずれも径60 μm以下で, 黒色不透明鉱物を包有するものが多い. 18粒のジルコンを学習院大学のLA-ICPMS によりU-Pb年代測定とREE分析を行った. 1粒のみのU-Pb年代がコンコーディア線上にプロットされ, 3,561 ± 16 Ma (太古代前期)という日本列島に産する岩石の年齢と比べて極めて古い207Pb-206Pb年代を持つ. その他17粒はディスコーディアな年代を示すが、207Pb-206Pb年代は35-38億年前という狭い範囲に集中する. コンコーダント年代を持つ粒のREEパタン(重希土類に富む, Ce正異常, Eu負異常)は典型的な花崗岩類中のジルコンのそれに類似する一方, 他の粒は1桁高いREE濃度を持ち, かつ明瞭なEu負異常を持たない. ジルコンの起源は以下のように考察される.
 ジルコンは蛇紋岩の原岩であるかんらん岩中で初生的に晶出したもののではなく, おそらく珪長質マグマから晶出したと判断される. コンコーダントな年代を持つ1粒は35億年前の太古代珪長質火成岩での晶出時の情報を保持するのに対して, 他の粒子は二次的な変成作用による鉛の消失と, 外部(おそらく斜長石を含まない岩石)からのウランやREEの添加を記録すると推定される. これらが二次的に日本列島の顕生代蛇紋岩に取り込まれる過程として2つの可能性が考えられる; 1)太古代珪長質岩の一部が古生代以降の弧地殻内で蛇紋岩中に構造的に混入した, あるいは2) 太古代にマントルへ沈み込んだ珪長質岩が、かんらん岩と混在化し変成作用を受けた. 日本が起源を持つ南中国地塊には太古代前期の岩石はほとんど産さず, 原生代地殻が卓越する. 北中国には太古代地殻に加えて原生代地殻も産する. 本試料は、原生代ジルコンのみならず隣接して産する古生代中期花崗岩類由来の粒子を全く含まない. 蛇紋岩が35億年前のジルコンのみを選択的に含むことから, おそらく後者の説明が有望である. プレート沈み込み型造山帯に産する蛇紋岩は, 海洋プレートのリソスフィアあるいはくさび状マントルのかんらん岩が加水されて、地表に露出した岩石である. 東京西部に産する太古代ジルコンは、おそらく先カンブリア時代にマントルに混入したものが約30億年ぶりに蛇紋岩を介して地球表層へ戻ってきたのであろう. このような他の年代のジルコンの混入を排除する古期大陸地殻物質のマントルかんらん岩中への混入プロセスについてはさらに考察を進める.