JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] [EJ] 津波堆積物

2017年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、千葉 崇(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)、後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)、座長:千葉 崇(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

11:45 〜 12:00

[MIS09-10] ロシア沿海州における1993年北海道南西沖地震による津波堆積物の面的分布

*西村 裕一1Nadezhda Razjigaeva2Larisa Ganzey2菅原 大助3高清水 康博4Ilya Lebedev2,5Ruslan Borisov2,5 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.Pacific Institute of Geography, FEB, Russian Academy of Sciences、3.ふじのくに地球環境史ミュージアム、4.新潟大学教育学部、5.Far East Federal University)

キーワード:津波堆積物、北海道南西沖地震、ロシア沿海州、面的分布、保存

日本海を隔てたロシア沿海州は,1900年代に日本海東縁を震源とする地震に伴って発生した津波で人的被害や構造物被害を受けてきた.最近,これらの津波による堆積物が残されていることも報告されている(Ganzey et al., 2015).我々は,2016年7月に沿海州の Valentine湾周辺を訪れ,1993年北海道南西沖地震と1983年日本海中部地震に伴う津波堆積物と考えられる砂層の面的分布を調査した.なお,Valentine湾はウラジオストックの東約200km,北海道奥尻島の西北西約440kmに位置し,緯度は札幌とほぼ同じである.1993年津波の高さは約4mで,漁船や港の施設に被害があった.一方1983年津波はやや小さく,被害を及ぼすほどではなかった.今回調査したのはおよそ500m四方の低地で,低い砂丘列を開拓して牧草地として使われていた時期があった.空中写真からは,砂丘の一部を切って日本海につながる河川の跡も識別できた.調査はハンディジオスライサーもしくはスコップによる掘削で行った.調査地点は35点,うち27点で試料を採取した.1993年の津波堆積物はここで,内陸約300m,標高約4m以下の範囲で,平均3–5cmの土壌に覆われてシート状に分布している.層厚の最大は10.5cm,砂の平均粒径は1.4–2.8φで淘汰は良い.層厚,平均粒径はともに内陸にいくほど薄層化,細粒化する傾向にあるが,特に旧河川がある低くなった場所で厚く,粗い.分布限界近くでは,砂層はパッチ状になり,分布は小規模な地形に支配されていた.また,海側の砂丘上にあって津波で被災した工場の背後には,砂層に石炭片が混在しており,津波が砂丘を越えて砂とともに人工物も運んだ様子もうかがえた.今日,近年の津波堆積物を海岸近くから遡上限界まで追跡できる場所は極めて少ない.日本海東縁を発生源とする津波の履歴を解明するだけでなく,津波堆積物の形成から風化・続成を受けて保存されるまでのプロセスを微地形や環境とともに検討する場としても,この地は貴重である.

Ganzey, L. A., Razjigaeva, N. G., Nishimura, Y., Grebennikova, T. A., Kaistrenko, V. M., Gorbunov., A. O., Arslanov, K. A., Chernov, S. B. and Naumov, Y. A., 2015, Deposits of Historical and Paleotsunamis on the Coast of Eastern Primorye. Russian Journal of Pacific Geology, 9, 64-79.