JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] [EJ] 津波堆積物

2017年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、千葉 崇(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)、後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)、座長:石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科)

13:45 〜 14:00

[MIS09-12] 珪藻化石群集より推定される北海道大樹町当縁川下流域における過去1000年間の地殻変動

*千葉 崇1西村 裕一1佐藤 晃2 (1.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター、2.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:当縁川、津波堆積物、珪藻化石群集

津波堆積物や地殻変動の復元といった地質学的研究により,千島海溝では超巨大地震(M9クラス)が約400~500年間隔で発生していたことが示唆されている(Nanayama et al. 2003,Sawai et al. 2004).この超巨大地震が最後に起きたのは17世紀の前半である.北海道東南部,大樹町の当縁川下流域に広がる湿原には,17世紀の火山噴火による噴出物(古川・七山2006)及び津波堆積物が泥炭層に狭在する形で良く保存されている(七山ほか2003).本研究では,17世紀の巨大地震に伴う地殻変動を抽出することを目的として,この当縁川下流域を調査し,泥炭に含まれる珪藻化石の分析を基に地殻変動のパターンを検出した.
調査地域の標高は約1.3 m~7.5 mである.17世紀の津波堆積物とみなされる砂層は河口から1.4 km内陸まで追跡することができ,内陸薄層化と内陸細粒化の傾向が認められた.海岸から1.2 km内陸の地点で得た長さ83 cm柱状試料について珪藻分析を行った結果,泥炭層中には淡水生種及び淡水-汽水生種が卓越していたこと,砂層には汽水-海水生種と海生種が含まれることがわかった.また砂層の堆積前に淡水生種が減少し淡水-汽水生種が増加する傾向が認められ,砂層の堆積後には淡水生種が増加する傾向が認められた.これらの傾向は,砂層の堆積前にこの地域が徐々に沈降して相対的に塩分が上昇したこと及び,砂層の堆積後には逆に隆起して塩分が低下したことを反映していると推測される.この地域で検出された地殻変動パターンは,さらに東の厚岸から根室において明らかにされた17世紀超巨大地震に伴う変動(Sawai et al. 2004)と類似している.17世紀の超巨大地震に関連した地殻変動を広い範囲で把握することは,この地震の断層モデルを検討する上でも重要である.