14:00 〜 14:15
[MIS09-13] 北潟湖の湖沼堆積物を用いた津波災害調査
キーワード:湖沼堆積物、津波、珪藻
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波災害を機に、日本各地で津波に対する警戒意識が高まった。日本における大規模津波災害の多くは、海溝を起源とする太平洋側に集中しているが、過去の歴史文献記録や既存の地質調査記録によると、日本海側でも比較的大規模な津波が発生していることが分かっている。そこで本研究では日本海側沿岸地域、その中でも特に北陸地域における津波災害に焦点をあて、過去の津波記録を復元することとした。一般的な津波堆積物には、葉理や級化構造、偽礫(rip up clast)といった堆積構造を持つことが知られている(澤井2012)。しかし、日本海側における津波は太平洋側と比べその威力は小さく、さらに浜提が発達していることから、このような堆積構造が顕著に見られる場所は限定的である。そこで本研究では浜提の発達していない、海との接続域が存在する湖の堆積物を用いた。さらに分析方法として堆積構造の解釈だけでなく、物理量分析や微量元素分析、珪藻観察など用い、津波堆積物の復元を行った。
試料には、福井県あわら市にある北潟湖の湖沼堆積物を用いた。北潟湖は、日本海との接続域を持ち、海水準との違いがほとんどないため、日本海からの影響を受けやすい湖であると言える。また、湖沼堆積物を用いるメリットとして、その年代分解能の高さが挙げられる。
各分析の結果、津波イベントと考えられる2つの層(170-203㎝,344-352cm)に加え、1659年に噴火した白山を起源とするテフラ層(79-85cm)と、湖環境が一変したと考えられる境界層(244cm)を確認した。
2つの堆積層では鉱物粒子径の粗粒化や含水率の減少、炭酸カルシウム量の増加が見られた。また珪藻観察では、前後層と比べ、珪藻の全体量が少なく、170-203㎝層では海水種のNitzschia lanceola、344-352cm層ではActinocyclus gallicusの割合が、淡水・汽水種より多い事が確認された。
以上の結果と年代測定結果、および歴史文献記録からイベント評価を行った結果、深さ170-203㎝の層は天正津波より若いため,1450年頃に堆積した歴史記録に存在しない新たなイベントであると考察した。深さ344-352㎝の層は700年頃に堆積したと考えられ、701年に日本海で発生した大宝津波の痕跡である可能性が高い。
試料には、福井県あわら市にある北潟湖の湖沼堆積物を用いた。北潟湖は、日本海との接続域を持ち、海水準との違いがほとんどないため、日本海からの影響を受けやすい湖であると言える。また、湖沼堆積物を用いるメリットとして、その年代分解能の高さが挙げられる。
各分析の結果、津波イベントと考えられる2つの層(170-203㎝,344-352cm)に加え、1659年に噴火した白山を起源とするテフラ層(79-85cm)と、湖環境が一変したと考えられる境界層(244cm)を確認した。
2つの堆積層では鉱物粒子径の粗粒化や含水率の減少、炭酸カルシウム量の増加が見られた。また珪藻観察では、前後層と比べ、珪藻の全体量が少なく、170-203㎝層では海水種のNitzschia lanceola、344-352cm層ではActinocyclus gallicusの割合が、淡水・汽水種より多い事が確認された。
以上の結果と年代測定結果、および歴史文献記録からイベント評価を行った結果、深さ170-203㎝の層は天正津波より若いため,1450年頃に堆積した歴史記録に存在しない新たなイベントであると考察した。深さ344-352㎝の層は700年頃に堆積したと考えられ、701年に日本海で発生した大宝津波の痕跡である可能性が高い。