JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] [EJ] 津波堆積物

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、千葉 崇(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)、後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)

[MIS09-P02] 宮城~岩手県三陸沿岸域に分布する3.11津波堆積物の粒子特性

*横山 由香1坂本 泉1高橋 大二郎1今井 將翔1高谷 泰紀1堤 康祐1八木 雅俊1藤巻 三樹雄1根元 謙次1笠谷 貴史2藤原 義弘2 (1.東海大学海洋学部、2.海洋研究開発機構)

キーワード:津波堆積物、三陸海岸

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、東北地方は大きな被害を受けた。特に太平洋沿岸地域では、地震に伴い発生した津波により壊滅的な状況となり、湾内海底では堆積物の浸食・撹乱・再堆積などが発生し、それに伴い海底地形や堆積物など海底環境が大きな変化を受けた。津波時には、その発生に伴いイベント堆積物が広範囲にわたって堆積することが知られている。三陸地方の多くの湾では、津波により①粗粒な(砂質~砂礫質)堆積物が湾全域に広範囲に分布したことが報告されている(大槌湾・唐丹湾・越喜来湾・広田湾など; 横山ほか,2014・八木ほか,2015など)が、一部の湾では②細粒な(泥~砂泥質)堆積物が新規に堆積したと報告されている(女川湾など; 坂本ほか,2016など)。本研究では、津波堆積物として粗粒な堆積物および細粒な堆積物が堆積した湾において、それぞれの湾における粒子特性を明らかにすることを目的とする。
 試料は①粗粒な津波堆積物が堆積した湾として大槌湾および広田湾、②細粒な津波堆積物が堆積した湾として女川湾で採取した柱状試料を用いた。試料はバイブレーションコアラーで採取後、岩相記載・軟X線観察およびレーザー回折散乱法による粒度分析(Malvern社製 Mastersizer3000)を行った。
【柱状堆積物試料による岩相記載】
 ①粗粒な津波堆積物の岩相特徴は、大槌湾および広田湾ともに上位から砂質堆積物で構成されるユニット1(以下、U1)および泥質~砂泥質堆積物で構成されるユニット2(以下、U2)に区分される。横山ほか(2014)による広田湾内堆積物の区分から、両湾におけるU1は2011年津波堆積物、U2は湾内通常時堆積物と推定される。また、広田湾においてはU2の下位に砂質堆積物で構成されるU3が分布することが認められ、その特徴からイベント堆積物の可能性が考えられる。両湾におけるU1の層厚は、約7~100 cmと非常に厚く堆積する傾向が認められる。
 ②細粒な津波堆積物の岩相特徴では、上位からシルト~中粒砂で構成され、基底部が比較的粗粒な堆積物で構成されるユニット1(以下、U1)、生物擾乱の発達するシルト層であるユニット2(以下、U2)に区分される。また、U2には火山灰層を含むコアも認められた。それぞれの特徴から、U1は2011年津波堆積物、U2は湾内通常時堆積物と推定される。
【粒度組成】
 粒度分析結果から中央粒径値と淘汰度の相関を求め、湾内堆積物特徴の推定に用いた。
 ①粗粒な津波堆積物では、相関図からどの試料においてもU1とU2の分布範囲が大きく異なる特徴が見られた。特に広田湾では周辺海岸に分布する砂の値を用い、それらとの関係も推定したところ、U1は海岸砂およびU2の間に分布し、両者に起源を持つことが考えられる。また、U3が認められた複数の試料においては、U3がU1と同様の範囲に分布することが確認され、U3はU1と同じようなイベントにより形成された可能性が考えられる。
 ②細粒な津波堆積物では、比較のため周辺海岸に分布する砂の値も用いた。相関図から、U1基底部は明瞭に区分され、U2および海岸砂の間に分布するが、U1層上部については、U2層とは分布範囲はやや異なるものの、粗粒な津波堆積物ほど明瞭には区分されない。細粒な津波堆積物の湾では、U1の分布は2つの範囲に分かれる傾向が認められた。これらは、津波堆積物の供給過程による特徴を反映したものと考えられる。
 したがって、①粗粒な津波堆積物が形成された湾では、湾内のイベント堆積物および通常時堆積物の区分に中央粒径値と淘汰度の関係を用いることは有用と考えられる。しかし、②細粒な津波堆積物が形成された湾では、イベント堆積物と湾内堆積物との区分が粗粒な津波堆積物が形成された湾ほど明瞭には認められない。細粒な津波堆積物が堆積した湾における区分方法については今後更に検討する必要が考えられる。