JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] [EJ] 津波堆積物

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、千葉 崇(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)、後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)

[MIS09-P06] 青森県三沢市に形成された2011年津波堆積物の保存と消失

*西村 裕一1 (1.北海道大学大学院理学研究院)

キーワード:津波堆積物、2011年東北津波、三沢海岸、保存、震災アーカイブ

青森県三沢海岸で,2011年東北地方太平洋沖地震津波による津波堆積物の保存と消失の状況を調べた. 2011年4月に津波痕跡を調査した全137地点(Nakamura et al., 2012)を2016年9月に再調査した結果,このうち65地点(47%)で砂からなる津波堆積物が残されていることを確認した.保存されていたのはほとんどが防砂林の中で,砂層の上位には数cmの新しい土壌が形成されていた.一方,津波により大きな被害を受けた防砂林の海よりの区画は,新しく防潮堤が構築されたり倒木が撤去されて新たに植林地が整備されたりして,津波堆積物を見ることができなくなっていた. 2011年のオリジナルの層厚が1cm以下のものについては,住宅地の敷地内だけでなく,防砂林内でも識別できなくなっていたものが多かった.
 Nakamura et al.(2012)による13測線のうち,5年以上経過したのちも遡上限界まで堆積物が残っていたのは2測線のみであった.今後も土壌中で風化が進めば,層厚がより薄いところから識別が不可能となっていくことが予想される.津波堆積物の分布限界と津波の遡上限界の関係を理解する上でも,こうしたデータの蓄積は重要である.三沢市の海岸は,土壌中に保存された2011年の津波堆積物を広い範囲で,かつ自然環境の中における風化過程も含めて継続的に観察できる貴重な場所である.残された津波堆積物は震災アーカイブの一つであると考えていいだろう.今後は,この地を研究,防災,教育の分野で有効に,そして持続的に利活用するための方策を探る必要がある.

Nakamura, Y., Nishimura, Y., Putra, P.S., 2012, Local variation of inundation, sedimentary characteristics, and mineral assemblages of the 2011 Tohoku-oki tsunami on the Misawa coast, Aomori, Japan. Sedimentary Geology, 282, 216-227.