[MIS09-P10] 津波堆積物中の有機元素分析および安定同位体比分析とその評価
キーワード:津波堆積物、東北地方太平洋沖地震、有機物
津波堆積物を用いた津波の検討における課題の一つに、地層中の津波堆積物を識別する手段の確立がある。従来、堆積物の堆積構造、粒度分布、珪藻等のデータから総合的に評価されてきたが、未だ識別方法は確立していない。近年では地化学分析データも識別指標の一つとして提案されてきており、識別指標が増えることで精度のよい識別方法が構築されつつある。本研究では、新たな識別指標の一つとして有機炭素安定同位体比と有機炭素-窒素比(C/N)を分析し評価した。東北~関東地方の太平洋岸のうち人工改変があまり行われていない場所(17か所)にて、海起源の端成分と思われる海水中の浮遊性有機物(POM)と砂浜の表層砂、および津波堆積物を採取し、それぞれ酸処理を含む前処理を行った後、有機炭素・窒素分析および炭素安定同位体比分析を行った。その結果、海水POMと砂浜の表層砂のデータについては、ほぼ海起源の範囲に分布しており、また同地域の文献値と比較してもおおむね同様の領域にあったため、これらは海起源の端成分として評価できた。一方で、津波堆積物については海起源~植物起源の範囲でばらついた。