JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] [EJ] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:大島 慶一郎(北海道大学低温科学研究所)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、座長:大島 慶一郎(北海道大学低温科学研究所)

10:45 〜 11:05

[MIS10-07] 最終間氷期の突然かつ急激な南極氷床崩壊イベントの検証とメカニズムの解明に向けて

★招待講演

*関 宰1 (1.北海道大学低温科学研究所)

キーワード:南極氷床、最終間氷期、海水準上昇

現在進行中の地球温暖化は我々の生活に様々な影響をもたらすが、中でも“海面上昇”は最も深刻な脅威の一つと考えられている。最新の観測から予想を超える急速なペースでの極域氷床の融解が進行中であることが明らかになり、温暖化の進行によって海面が大きく上昇する懸念が高まっている。こうした将来の海水準変動を予測する上で過去の温暖期の海水準変動がどうであったかを調べるのは有益である。これまでの古環境の研究において、現在よりも僅かに温暖な最終間氷期(13-11.5万年前)の末期には、6mもの突然かつ急激な海面上昇があったと報告されている。これが事実であれば、現在のような間氷期の気候状態で、氷床の大規模な崩壊とそれに伴う海水準上昇を誘発する臨界点が極域の氷床に存在することになる。この最終間氷期における劇的な海面上昇に対するグリーンランド氷床融解の寄与は最大の見積もりでも2m程度とされるので、当時の海水準上昇の主因は南極氷床の大規模な融解によるものと考えることができる。近年の温暖化によって現在の気候状態(全球平均の表層海水温度)はすでに最終間氷期のレベルに達しており、南極氷床の大規模な崩壊が将来に起こり得る可能性を検証することは喫緊の課題と言える。この問題に取り組むためには、最終間氷期に実際に急激な南極氷床の大規模崩壊があったかを精査することが重要である。しかし、最終間氷期の南極氷床縁辺海域における気候・海洋情報は、ほとんど蓄積されておらず、最終間氷期に南極氷床が大規模崩壊した直接的な証拠はいまだに得られていない。本講演では不可逆的な氷床融解への臨界点である「ティッピング・ポイント」の理解において過去の温暖期に起こった突然かつ急激な南極氷床崩壊イベントの検証とそのメカニズムを解明することの重要性について解説する予定である。