JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] [JJ] 山岳地域の自然環境変動

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(信州大学理学部)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)、座長:鈴木 啓助(信州大学)

15:30 〜 15:45

[MIS13-01] 大幅に融けた2016年秋の飛騨山脈北部の氷河・雪渓

*福井 幸太郎1飯田 肇1 (1.立山カルデラ砂防博物館)

キーワード:氷河、雪渓、飛騨山脈、UAV、地中レーダー

1.はじめに
2016年冬の記録的な少雪の影響で、同年9~10月にかけて飛騨山脈北部の雪渓や氷河は20年ぶりといわれるほど大幅に融解した。本発表では、博物館が2009年から観測を行っている飛騨山脈北部の氷河・雪渓の融解状況についてUAVやヘリコプターを用いて撮影した空中写真や地中レーダーによる雪渓断面の観測結果、雪尺を用いた質量収支観測結果について報告する。

2.剱沢雪渓
0.26 km2に達する日本最大の多年性雪渓である。2016年秋に中央部2カ所で雪渓が消失し河原が露出、雪渓は大きく3つに分割された。
年8月17日の地中レーダー観測の結果から、武蔵谷、平蔵谷、長次郎谷など支流の合流点(出合)では、厚さ18 m前後の氷体が存在するが、それ以外では存在しないことが判明していた。氷体が無い場所で2016年秋に雪渓が消失した。

3.白馬大雪渓
越年する面積が0.17 km2に達する多年性雪渓で、白馬岳山頂に通じる日本屈指の人気登山ルートが雪渓上に設置されている。2016年秋、支流の三号雪渓から下流側でスノーブリッジの崩落やクレバスの発達が激しく、同年9月1日に登山ルートが通行止めになった。2015年10月21日の地中レーダー観測の結果から、二号雪渓の合流点から下流側200 mでは、雪渓の厚さが20 mと厚いものの、それ以外の部分は厚さ5~10 mと薄いことが分かっていた。この雪渓は面積の割に全体的に薄く、融解が進んだ年にはかなりの部分が消失してしまう可能性があったといえる。

4.御前沢氷河
立山の主峰雄山の東側に位置する面積0.12 km2の氷河である。2016年は9月に入ると氷体が表面に露出し、中央部や末端のモレーンが大きく露出したものの、剱沢や白馬大雪渓のようにスノーブリッジの発達はみられない。氷河上4カ所で実施している雪尺を用いた質量収支観測によると2011/2012年は平衡線高度が2660 m付近であったが、2012/2016年は質量収支(4年間の平均)が氷河全域でマイナスであった。

5.内蔵助雪渓
 立山の真砂岳の東側に位置する面積が0.04 km2の多年性雪渓である。厚さ30 mに達する氷体をもつ。2016年は表層にムーランが20近く表面に出現した。
出現したムーランの深さの測定や地中レーダーによる雪渓断面観測から内蔵助雪渓の氷体の厚さは25~30 mで30年前の1988年とほとんど変わっていないことが分かった。