JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] [JJ] 山岳地域の自然環境変動

2017年5月25日(木) 09:00 〜 10:30 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(信州大学理学部)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)、座長:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)

09:15 〜 09:30

[MIS13-08] 立山室堂と千畳敷における消雪と高山植生の展葉・紅葉フェノロジーの年変動

*井手 玲子1小熊 宏之1浜田 崇2尾関 雅章2鈴木 啓助3久米 篤4 (1.国立研究開発法人 国立環境研究所、2.長野県環境保全研究所、3.信州大学、4.九州大学)

キーワード:定点カメラ、画像解析、RGB、葉の寿命、紅葉の鮮やかさ

1.はじめに:地球温暖化により、極めて寒冷な環境条件で隔離的に生育する高山植物の展葉、開花、紅葉、落葉などの生物季節(フェノロジー)や分布域の変化が各地で報告されている。また、植物とそれを利用する昆虫や動物種ごとの異なる温度応答により生ずる活動時期のミスマッチなど、高山生態系の気候変動に対する脆弱性が危惧され、モニタリングの重要性が認識されている。多雪を特徴とする日本の高山帯においては積雪や消雪時期が生物の活動にとって重要な要因となる。そこで、消雪と植生フェノロジーを高頻度・高解像度で把握するため、山小屋などに自動撮影デジタルカメラを設置し定点観測を行ってきた。本研究では定点カメラの画像解析から、立山室堂と千畳敷における消雪時期と植生の展葉・紅葉フェノロジーの年変動を検出する。さらに、気象観測データを用いて、フェノロジーや紅葉の色付きと気象要因との関係性を解明することを目的とした。
2.方法:定点カメラにより2009-2016年に北アルプス立山室堂山荘(標高約2450m)から雄山方面を撮影した約18000シーンと、2012-2016年に中央アルプス千畳敷(約2650m)から極楽平方面を撮影した約11000シーンの画像を用いて解析を行った。これらの画像から画素毎に記録されているRGB三原色のデジタルカウント値を抽出し、統計的手法により積雪画素と非積雪画素に判別し、消雪過程を調べた。さらに、画像中に撮影されているナナカマドとダケカンバの画素について、RGBの合計値に対するGとRの割合をそれぞれ緑葉と紅葉の指標値として時系列変化を算出し、展葉や紅葉時期、紅葉の色の鮮やかさを定量的に評価した。
3.結果:立山室堂および千畳敷において、2015-2016年は最近数年間で最も積雪量が少なく気温が高めに推移したため融雪の進行が早く、例年と比較してそれぞれ約22日、38日早い消雪となった。それに伴って2016年は展葉が非常に早く、落葉性植物の生育期間は最長になった。紅葉時期については、例年は8月下旬から9月中旬の平均気温と高い相関を示したが、2016年は気温が高い割りに紅葉が早く、気温だけでは説明できなかった。そこで葉の寿命を考慮して、気温に加えて展葉時期を説明変数とした回帰式により紅葉時期の予測が可能になると考えられた。また2016年は紅葉の色付きが悪い傾向が見られたが、紅葉の色の鮮やかさの年変動には夏期の日射量や秋の最低気温などとの関係が認められた。このような定点カメラを用いた観測により、高山帯における消雪時期や植生フェノロジーを高い時空間解像度で検出し、多時期かつ多地点での客観的な比較が可能になった。今後、定点カメラを多地点で展開し、気象観測データと合わせた解析を進めることにより、気象要因による展葉や紅葉フェノロジーへの影響評価と将来予測が期待される。