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[MIS13-16] 巨摩山地・櫛形山東麓における斜面変動と後期更新世の古湖沼の発達史
キーワード:地すべり、湖成堆積物、テフロクロノロジー、花粉分析、御岳第1テフラ、御岳伊那テフラ
山梨県巨摩山地の櫛形山東面山腹には長さ5 km、幅1~1.5 kmの凹地帯が南北走向に発達する。この凹地帯の少なくとも一部の領域は更新世中期に遡る可能性をもつ旧期地すべり堆積物に埋積される。旧期地すべり堆積物は、泥炭やシルトを主とし御岳第1(Pm1;100 ka)・御岳伊那(In;95 ka)両テフラを挟む厚さ数m~16 mの湖成堆積物に覆われる。湖成堆積物は複数の地点で観察されるが、それらの分布高度は3つに分かれる。これより、古湖沼は凹地帯に独立して3つまたはそれ以上存在していたとみられる。また湖成堆積物中のPm1とInの層位および花粉分析結果によれば、古湖沼はPm1降下前の海洋酸素同位体ステージ6(185~135 ka)または5d(112~110 ka)に生じ、In降下後までの約1万~数万年間存続したと推定される。その後、湖成堆積物は凹地帯西方の櫛形山山腹斜面を発生域とする新期地すべり堆積物に覆われた。凹地帯自体の形成過程は検討中であるが、湖成堆積物やテフラとの関係からみてそれが更新世後期初頭に生じていたのは明らかである。凹地帯の発達は櫛形山の山体重力変形や東麓を走る市之瀬断層の挙動が関係していた可能性がある。