JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] [JJ] 山岳地域の自然環境変動

2017年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(信州大学理学部)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科)

[MIS13-P08] 穂高連峰・明神岳南面で発生した岩盤崩壊と明神池の成因

*森田 真之1苅谷 愛彦2 (1.専修大学文学部環境地理学科学部生、2.専修大学文学部環境地理学科)

キーワード:巨礫、岩盤崩壊、前穂高岳溶結凝灰岩層、山地の地形、斜面災害

上高地の明神池とその周辺には起源や年代が不詳の巨礫群が存在する。本研究では、これらの巨礫群について分布と構成礫種を記載し、巨礫の供給域と供給プロセスを推定した。そのうえで、巨礫群が近傍の裸岩急斜面で発生した岩盤崩壊に由来すること、および明神池の形成に関与したことを論じた。主要な結果は次のとおりである。
(1)巨礫(長径≧2 m)は全量が前穂高岳溶結凝灰岩層の亜角礫~角礫で、明神岳南面に露出するこれ以外の岩種を含まない。(2)巨礫群は明神池のうち二之池をまたぐように分布し、全体として比高数m程度の微高地を成す。一方、二之池の東西に接する一之池や三之池の周辺および梓川左岸には分布しない。(3)現存する巨礫群の面積は約7.2×104 m2で、平均層厚を5 mとした場合の体積は約3.6×105 m3と推定される。(4)明神岳南面の標高2100m付近に急崖が存在する。この急崖の一帯には前穂高岳溶結凝灰岩層のみが露出し、南西に傾斜した平滑なスラブを形成する。(5)明神池の成因と形成時期は未詳である。ただし古文書によれば、明神池畔の穂高神社奥宮はAD1693には存在していた。
以上の資料に基づき、次の結論を得た。(a)巨礫群は明神岳南面の裸岩壁(前穂高岳溶結凝灰岩層)から供給された岩屑より構成される。(b)岩屑の供給プロセスとして岩盤崩壊が想定される。岩屑が河川や氷河によりもたらされたとすると、観察事実を矛盾なく説明することが困難となる。(c)崩壊発生域は明神岳南面の標高2100m付近の急崖である。(d)明神池は岩盤崩壊でもたらされた岩屑が、古梓川を堰き止めて生じたものである。(e)明神池の形成後に穂高神社奥宮が建立されたとすれば、岩盤崩壊の発生時期はAD1693以前と考えられる。