09:45 〜 10:00
[MIS14-04] 新潟焼山火山防災協議会との連携強化で行われた2016年新潟焼山噴火に対する糸魚川ジオパークの調査・防災教育活動
キーワード:新潟焼山、水蒸気噴火、糸魚川ユネスコ世界ジオパーク、博物館
新潟県糸魚川市と妙高市の境界にある新潟焼山(2400m)は、フォッサマグナ最北端に位置する活火山であり、気象庁による常時観測対象火山である。約3000年前に誕生した非常に若い複成火山であり、過去の噴火では火砕流が日本海まで到達し(約20km)、マグマ噴火は100年~400年間隔で起こっている(早津、2008)。1773年の最終のマグマ噴火から244年が経過している。1974年には水蒸気噴火を起こし、登山中の大学生3名が犠牲となった。焼山は2016年4月下旬~5上旬(噴火日の特定不能)に、1998年以来18年ぶりに水蒸気噴火を起こし、焼山を源流とする火打山川の白濁現象が生じて、地域住民に大きな不安を引き起こした。
新潟焼山の火山防災は、糸魚川市が取り組む重要課題である。糸魚川市は2009年の世界ジオパーク認定以降、自然災害に対する防災や防災教育に重点を置いて活動してきた。防災を進めていく部局として、市行政・市消防本部・フォッサマグナミュージアム(市教育委員会、以下ミュージアム)が担い、地域住民への科学的な情報提供、避難訓練、自主防災組織との連携などに取り組んできた。2016年春の噴火は、糸魚川ジオパークの火山防災に対する実践が試される機会となった。講演会、展示会、展示解説、現地見学会、河川の白濁調査、噴火記録の保存などが行われると同時に、これらの一連の取り組みに、地元である上早川地区公民館と下早川地区公民館との連携が取られ、ミュージアム友の会が一部の行事に対する運営支援を行った。また、新潟焼山火山防災協議会(以下、協議会)の構成メンバー(2016年からミュージアム学芸員が委員として参加)からさまざまな支援を受けた。
講演会(2回実施):1)「新潟焼山の現状と他火山の噴火対応事例」舟崎 淳氏(新潟地方気象台長)、「新潟焼山防災対応」糸魚川市消防本部防災課、下早川地区公民館で開催(10月8日)、参加者140人。2)「火山噴火のメカニズムと予測 ―新潟焼山の今後を考える―」石原和弘氏(火山防災推進機構理事長・京都大学名誉教授)、「火山防災マップから噴火災害を読み解く」伊藤英之氏(岩手県立大学教授)、ミュージアムで開催(10月23日)、参加者83人。
火山噴出物現地見学会:実際の噴火スケールを体感できるように溶岩や火砕流の厚さや流下距離、火山灰が埋設した谷の範囲などを説明し、合わせて砂防堰堤などを見学(11月20日)、上早川地区住民対象、ミュージアム友の会運営支援、ミュージアム学芸員案内、参加者34人。
特別展「新潟焼山の噴火に備えて -火山を知って命を守る-」:ミュージアムで開催(10月23日~12月4日)。地元住民が撮影した焼山の写真の展示、地元に保存されていた噴火災害資料の活用、国土地理院が作成した焼山噴気孔の地図データなど展示が行われ、地図と測量の科学館・全国火山系作成博物館連絡協議会作成の巡回展パネルを借用した。
ギャラリートーク(展示解説):学芸員と参加者の双方向の説明と質疑応答、火砕流実験と溶岩実験の実演、火山灰や溶岩の顕微鏡観察。8回実施(特別展期間の日曜日・祝日)、参加者70人。
河川の白濁調査:新潟県と糸魚川市(消防本部・博物館などを含む)が水質分析と白濁の原因調査(2回)を行い、標高1050m付近での温泉湧出が原因であることがわかり、地域住民への説明会を行った。
噴火記録の保存:1974年水蒸気噴火における噴石や土石流、泥流による被害や被害調査などを克明に記録した資料(原 広吉氏手記)が地元に残されていることがわかり、電子化する作業が開始された。
協議会と糸魚川ジオパークとの連携によって以下のような好例を得られた。1)焼山の防災教育活動に対し、協議会を構成する専門家や研究機関などからさまざまな支援が行われた。2)これまでのような火山観測データの提供を受けるだけでなく、糸魚川ジオパークが行った調査結果を協議会で共有することができた。3)糸魚川ジオパークからの科学的な根拠に基づいた観測体制の強化などの要請が行えるようになった。
文献
早津賢二、2008、妙高火山群 ―多世代火山のライフヒストリー―。実業広報社、424p。
新潟焼山の火山防災は、糸魚川市が取り組む重要課題である。糸魚川市は2009年の世界ジオパーク認定以降、自然災害に対する防災や防災教育に重点を置いて活動してきた。防災を進めていく部局として、市行政・市消防本部・フォッサマグナミュージアム(市教育委員会、以下ミュージアム)が担い、地域住民への科学的な情報提供、避難訓練、自主防災組織との連携などに取り組んできた。2016年春の噴火は、糸魚川ジオパークの火山防災に対する実践が試される機会となった。講演会、展示会、展示解説、現地見学会、河川の白濁調査、噴火記録の保存などが行われると同時に、これらの一連の取り組みに、地元である上早川地区公民館と下早川地区公民館との連携が取られ、ミュージアム友の会が一部の行事に対する運営支援を行った。また、新潟焼山火山防災協議会(以下、協議会)の構成メンバー(2016年からミュージアム学芸員が委員として参加)からさまざまな支援を受けた。
講演会(2回実施):1)「新潟焼山の現状と他火山の噴火対応事例」舟崎 淳氏(新潟地方気象台長)、「新潟焼山防災対応」糸魚川市消防本部防災課、下早川地区公民館で開催(10月8日)、参加者140人。2)「火山噴火のメカニズムと予測 ―新潟焼山の今後を考える―」石原和弘氏(火山防災推進機構理事長・京都大学名誉教授)、「火山防災マップから噴火災害を読み解く」伊藤英之氏(岩手県立大学教授)、ミュージアムで開催(10月23日)、参加者83人。
火山噴出物現地見学会:実際の噴火スケールを体感できるように溶岩や火砕流の厚さや流下距離、火山灰が埋設した谷の範囲などを説明し、合わせて砂防堰堤などを見学(11月20日)、上早川地区住民対象、ミュージアム友の会運営支援、ミュージアム学芸員案内、参加者34人。
特別展「新潟焼山の噴火に備えて -火山を知って命を守る-」:ミュージアムで開催(10月23日~12月4日)。地元住民が撮影した焼山の写真の展示、地元に保存されていた噴火災害資料の活用、国土地理院が作成した焼山噴気孔の地図データなど展示が行われ、地図と測量の科学館・全国火山系作成博物館連絡協議会作成の巡回展パネルを借用した。
ギャラリートーク(展示解説):学芸員と参加者の双方向の説明と質疑応答、火砕流実験と溶岩実験の実演、火山灰や溶岩の顕微鏡観察。8回実施(特別展期間の日曜日・祝日)、参加者70人。
河川の白濁調査:新潟県と糸魚川市(消防本部・博物館などを含む)が水質分析と白濁の原因調査(2回)を行い、標高1050m付近での温泉湧出が原因であることがわかり、地域住民への説明会を行った。
噴火記録の保存:1974年水蒸気噴火における噴石や土石流、泥流による被害や被害調査などを克明に記録した資料(原 広吉氏手記)が地元に残されていることがわかり、電子化する作業が開始された。
協議会と糸魚川ジオパークとの連携によって以下のような好例を得られた。1)焼山の防災教育活動に対し、協議会を構成する専門家や研究機関などからさまざまな支援が行われた。2)これまでのような火山観測データの提供を受けるだけでなく、糸魚川ジオパークが行った調査結果を協議会で共有することができた。3)糸魚川ジオパークからの科学的な根拠に基づいた観測体制の強化などの要請が行えるようになった。
文献
早津賢二、2008、妙高火山群 ―多世代火山のライフヒストリー―。実業広報社、424p。