JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] [JJ] ジオパーク

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)

[MIS14-P09] 民間団体間の連携によって実践されているジオパーク教育の一例について

*丹保 俊哉1藤田 将人2杉谷 和嗣3増渕 佳子2竹内 章4相馬 恒雄4水原 登志子5 (1.富山県立山カルデラ砂防博物館、2.富山市科学博物館、3.一般財団法人 富山・水・文化の財団、4.富山大学、5.一般社団法人 立山黒部ジオパーク協会)

キーワード:ジオパーク教育、民間連携

立山黒部地域におけるジオパーク活動は、運営組織の立ち上げから地域の経済界が牽引役となり、それを行政がバックアップする形で進められ、国内では類例を見ない民間組織によって運営されているという特徴を有している。この運営方式の利点は、事業運営に経営者の知識経験を富に反映させられる点にある。当地域はジオパークとして現在も発展途上ではあるものの、この利点を活かし、地域経済や観光需要のニーズに合わせて少ないリソースを集中投入して事業の効率的展開をおこないつつジオパークの知名度の向上を図ろうとしている。これは日本ジオパークの中でも比較的広域なエリアを持つ当地域として、エリア内で活動度やジャンルの粗密を許容せざるを得ない一面を一時的には受認し得る、民間ならではの戦略であると考えている。
こうした戦略はジオ教育の現場でも活きている。立山黒部地域では、ジオパークの認定以前から地域の社会環境の特徴として、身近に豊かな水資源が存在しており、その重要性もまた認識されていたことから水環境の保全教育活動が盛んに行われてきていた。しかしその一方で、こうした水環境の成り立ちに急峻な立山連峰の地史が関わっていることや、臨海性の複合扇状地を主要な生活圏として拓き社会基盤の発展を成し遂げてきた人の歴史と結びついて普及啓発されていなかったため、その尊さをより深く掘り下げて理解を浸透させられる伸びしろの余地が残されていた。現在、立山黒部ジオパークではこの点に着目して、水環境の学習活動に注力している。
一般財団法人 富山・水・文化の財団(富山市新根塚町)は、2003(平成15)年から水みらいプロジェクトと呼ばれる、富山県内の小学校などの団体を対象とした事業によって子ども達の水に関わる学習活動を継続的に支援してきた。立山黒部ジオパークは、日本ジオパーク準会員の頃である2013(平成25)年よりこの活動に参画し、「ジオパーク探検隊」の学習指導者としてスタッフを現場に派遣している。現段階ではテーマを小学5、6年生の理科単元「流れる水の働き」や「大地のつくりと変化」、社会科単元「わたしたちの生活と環境」、そして総合的な学習の時間などを対象として、4箇年で5校7クラス(地域内4校6クラス)の児童の取り組みに関わってきた。
一見して事業規模は小さく見えるものの、実はこの活動には大きなメリットが付帯している。地域の民間放送局である富山テレビ放送株式会社の協力を得て、活動報告を番組として県内全域に配信していただいており、ジオパーク活動の理念の普及に大きな役割を果たしてもいるのである。富山・水・文化の財団にとっても、新しい切り口の水環境の保全教育活動が動きだす成果がもたらされており、ジオパークによって民間組織間の新たな互恵関係が結実した好例となったと考えている。