JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] [JJ] ジオパーク

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)

[MIS14-P11] 山陰海岸ジオパークの猿尾滝の貫入岩体は岩脈ではなくラコリス

*羽地 俊樹1山路 敦1 (1.京都大学理学部)

キーワード:山陰海岸ジオパーク、ラコリス

日本の滝百選に数えられる落差約60 mの猿尾滝は,山陰海岸ジオパークの見所の一つである.そこには厚い岩脈が露出すると,同ジオパークのホームページや現地の案内板などに記されている.しかし今回,この岩体の分布と母岩の村岡層の構造を精査した結果,岩脈ではなくラコリスである公算が高いことがわかった.

猿尾滝を含むこの但馬地方北部にはたしかに多数の中新世岩脈が貫入しており,それらのトレンドによって,西南日本の応力場が15Maに転換したとされ(小林, 1979a, b; Tsunakawa, 1986a),古地磁気回転の終了との同時性から,日本海拡大とのかかわりも議論もされてきた(e.g., Tsunakawa, 1986b; Yamaji and Yoshida, 1998).猿尾滝の岩脈もその証拠の一つとされ,議論に利用されてきた.われわれはこの応力場転換を再検討すべく,この地域の地質調査を進めている(Haji et al., JpGU2017, Session S-IT29).その結果,同岩体が岩脈ではないことが判明したわけである.

母岩との境界面自体は発見できなかった.しかしその両側の岩体の分布をおさえてゆくと,貫入面ほぼ等高線に沿っており,また,地図上で境界線が蛇行すること,これら2点が岩脈ではなく層状貫入岩体と考える証拠である.この岩体は,但馬妙見山西麓の作山(つくりやま)川の峡谷にのみ露出する.猿尾滝の北西約500の地点から,北西走向の作山川河床にそって約1.6 kmにわたってほぼ連続的に露出する.また,峡谷を刻む急崖に点々と露出する.母岩は中期中新統村岡層の頁岩(砂岩を挟在)で,大局的には東北東に10°内外で傾く.峡谷の北東側では母岩は猿尾滝の岩体近傍までこの姿勢のままで,境界面は標高約420 mのところにある.しかし峡谷の南西側では,境界近傍の頁岩は逆方向に十数度傾いていて,境界面は標高400 mの等高線にそっている.また,この岩体の北側の頁岩は,北に張り出した貫入面に大部分が調和的に,地図上で湾曲した単斜構造をつくっている.付近にはたしかに多数の岩脈やシルが露出しているが,これらの証拠は,猿尾滝の岩体がラコリスであることをしめす.露出する限りで,最大厚は約100 mである.このラコリスの北端は猿尾滝の北西約500 mにある.この岩体が作山川の峡谷にしか露出しないため,水平規模ははっきりしないが,妙見山の南斜面や東斜面に露出しないことから,東にも南にも4 km以内で尖滅する.

層状貫入岩体の研究では,露出良好なユタ州が教科書的地域であるが,そこのラコリスが多数のシルからなる複合貫入岩体であることが最近明らかにされた(Morgan et al., 2005).節理パターンの違いなどから,内部の層構造が認定されたわけである.猿尾滝の岩体は峡谷の急斜面に露出するため近づきがたいが,遠望して滝の壁面では摂理パターンから4層が認定できる.このラコリスも複合貫入岩体である可能性が高い.