JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] [JJ] ジオパーク

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)

[MIS14-P16] 青森県下北半島の仏ヶ浦の特異な風化侵食地形

*前崎 楓1植田 勇人1小岩 直人2葛西 未央2 (1.新潟大学、2.弘前大学)

はじめに: 青森県下北半島にある仏ヶ浦は,グリーンタフからなる岩石海岸で,岩石の風化侵食による特異な景観が見られることで観光地として有名である.2016年9月に下北ジオパークが日本ジオパークに認定され,仏ヶ浦はジオサイトの目玉の一つでもある.しかし,仏ヶ浦の奇岩地形の形成要因については,現地調査による既存の研究事例がなく,ガイドブックやパンフレットにおいても,漠然と風雨や波浪といった一般論でしか説明がされていないという現状である.そこで本研究では,仏ヶ浦の形成メカニズムについての解明を目的として現地調査と室内での分析や実験を行った.研究では,仏ヶ浦を特徴づける岩塔(ピナクル)と岩塔に刻まれた縦筋状の細溝(リル)の形成過程・形成要因に注目した.
岩塔(ピナクル): ピナクルは海岸のみならず山腹斜面にも存在し,山腹斜面のピナクル間の凹部では節理の有無にかかわらず岩盤表面が板状に剥離する風化が認められた.とくにピナクルの下部では風化によりノッチが形成され,えぐれている.このことから,現在ピナクルが形成されつつあると考えられる.表面に占める剥離部の占有率を計測したところ,常に濡れたところと乾いたところの境で剥離が活発であったことから,地下水の浸透が関与した風化と推定される.また,グリーンタフを用いた再現実験より,凍結融解の繰り返しによって岩石表面が剥離することが分かった.
細溝(リル): リルは海に近いピナクルの表面に発達しており,海岸線から離れたピナクルには見られない.よって,リルの形成には雨だけではなく,海水の影響が大きく関わっていると推定される.また,北向きの面より南向きの面でリルが発達している.リルの底には砂が堆積しているのが観察された.以上の観察から,リルは,固結したグリーンタフが砂になるような風化をし,海水や気象の影響を受けて形成されると予想した.再現実験より,塩類風化によって試験体の一部が砂状にばらける風化が観察された.
まとめ: ピナクルは山腹斜面で剥離が起きることにより削り出される.剥離は凍結風化の繰り返しによって起きる.リルは塩類風化により岩石が砂状に風化し,波や雨の流水により侵食されて形成されたと予想される.今後,実験結果から考えられたメカニズムが現地で実際に見られるか調査を行いたい.